Abstract : |
VSDに大動脈弁が突出してAIが生ずるいわゆる突出性大動脈弁閉鎖不全症の発生機序について, 82例のVSD with AIの術前大動脈造影および24例のAIを合併していない円錐部VSDの大動脈造影をもとにして検討した. 大動脈弁の突出は生直後から発生するもので, 突出の大きいものほどAIは早期に発生する. AIは生後1年以上経過してから発生するものが多いが, いつたんAIが生ずると2~3年で急速に悪化し, 6年以上経過すると大動脈弁は高度に肥厚, 変形する. 大動脈弁に対する血流作用は大きく分けて, 収縮期のVSDを短絡する血流作用と上行大動脈を流れる血流作用, それに拡張期の大動脈圧作用とがある. 収縮期にVSDを短絡する血流は狭いVSDを通るときに速度を増すことによつてVenturi効果が働き, 大動脈弁弁輪部をVSD内に引きこむ. また収縮中期から後期にかけて大量に上行大動脈に駆出される血液は大動脈起始部を外側に押し拡げる力をもつ. この面者の相乗作用によつて大動脈弁は収縮期に大きく右心室側へ突出する. 一方拡張期の大動脈圧は突出した大動脈弁に垂直方向から遊離縁を押しさげるように働く. 遊離縁の下垂が進行すると, やがて対峙する半月尖の遊離縁の間のcoaptationが失われてAIが生ずる. AIのジェットは下垂した弁の向い側の半月尖の下面を通り, 左心室後方あるいは側方に流れる. また逆流ジェットにより生じた渦流が下垂した大動脈弁の下面にあたり, これを線維化させ, 肥厚させる. こうした収縮期, 拡張期の血流作用によつて解剖学的に支持の弱い大動脈弁は弁輪部がVSDを通して, しだいに大きく右心室側に突出するようになり, 遊離縁の延長, 下垂が高度になるにつれて, AIが増悪する. |