アブストラクト(23巻10号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 急性期心筋硬塞切除に関する実験的研究
Subtitle :
Authors : 田中稔, 弥政洋太郎
Authors(kana) :
Organization : 名古屋大学医学部第1外科教室
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 23
Number : 10
Page : 1182-1196
Year/Month : 1975 / 10
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 急性期心筋硬塞に冠動脈再建術を行い, 積極的に外科的根治療法が行われるようになつたが, 心筋の虚血開始後経過した時間により, 血行再建後, 逆に出血性硬塞などの危険を伴うことが指摘されており, 不整脈の除去・血行動意の安定を求める以外に, この面からも急性期硬塞切除が考慮される. 本研究では急性期硬塞切除後の血行動態の変化を実験的に観察し, 臨床的に本術式を施行する場合の可否を検討した. 雑種成犬34頭を用い, 硬塞作成前, 硬塞作成後90分, 硬塞切除後90分に, 左室圧・左房圧・右室圧・大動脈圧・中心静脈圧・心拍出量・左室圧max dp/dtを測定し, 左右心室の1回仕事量・全末梢血管抵抗を計算し各々を比較した. 硬塞部心筋の切除量は心臓重量の10%以上を切除すると長期生存が得られなかつたため, 本実験では生存可能な範囲内, すなわち心重量比10%以下を左室壁前側部自由壁から切除し血行動態の観察を行つた. 硬塞作成後41%に心室細動が発生し, その中の44%が硬塞部切除後容易に除細動が可能となり, 硬塞切除が硬塞後の心室細動除去に有効であることを確認した. 血行動態の面でも硬塞作成後, 左室圧・左室圧max dp/dt・左室1回仕事量の低下と同時に左房平均圧の上昇がみられた. しかし, 右心系にはほとんど変化がなく, 心筋硬塞の急性期に心機能を判断してゆくには必ず左心系の変化を影察する必要がある. 硬塞切除後, これらの値は改善されるが, 硬塞作成後に減少した1回心拍出量は硬塞切除後も増加することがなく, これは左室腔の減少に基づくものと考えられ, 長期生存が可能な範囲内の切除でもこのような結果が得られることは, 極めて限局された虚血部分の切除により, 心機能上の障害がとりのぞかれ得る時にのみ硬塞切除術が適応として考慮されるべきであると結論した.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords :
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