アブストラクト(23巻10号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 弁つき同種肺動脈移植による新しい右室流出路形成の実験的研究
Subtitle :
Authors : 田本杲司, 弥政洋太郎
Authors(kana) :
Organization : 名古屋大学医学部第1外科教室
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 23
Number : 10
Page : 1197-1209
Year/Month : 1975 / 10
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 右室と肺動脈間の連続が断たれている疾患に対して, 弁つき同種大動脈を用いて, 新しく右室流出路を形成する試みは, すでに臨床的に広く行われている. ところが, 多くの移植大動脈壁の石灰化が強くおこつてくることが明らかにされた. 弁つき同種肺動脈を利用した臨床報告は少ないが, 実験的には, 動脈壁の石灰化がまれであると云われている. そこで, 雑種成犬を用いて, 弁つき同種肺動脈を, 右室と肺動脈分岐部にバイパス移植して, その血行動態, 病理解剖学的および組織学的変化を, 経時的に移植後2年まで追跡してみた. 弁および動脈壁が, 保存処理の方法によつては, 著しい変化をきたすと云われているので, 保存処理法を3種類に分け, これら各グラフトの比較を行い, さらに, 新鮮グラフトとの対比も試みた. 実験成績より, つぎの結論を得た. (1)1%βプロピオラクトン処理グラフトと70%アルコール保存グラフトでは, 弁尖の萎縮, 肥厚, 移植肺動脈壁の拡張, 菲薄化, 弾性の減退などの変化が著明に見られた. さらに, 動脈壁内膜の石灰沈着が, レ線的には確認できなかつたが, 組織学的に証明された. また, 硝子様変性が, 動脈壁内膜に高率におこつていた. これに対し, (2)高エネルギー電子線照射凍結保存グラフトおよび新鮮グラフトでは, こうした変化は軽微にとどまつており, 動脈壁内膜の石灰沈着は認められなかつた. 以上より, 保存処理法には, 高エネルギー電子線照射凍結法が優れていると考えられ, 新鮮グラフトの利点も多いことが判明した. 同種肺動脈は, 石灰化の少ない代わりに, 動脈壁の拡張と弾力性の減退がおこるので, バイパスグラフトの導管部分に使用する材料としては, 人工血管の方が望ましいと思われる. 弁性部分には, 人工弁より, 生体弁を利用した方が利点が多いと考えられる.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords :
このページの一番上へ