Abstract : |
Endotoxinショック時における肺循環障害の発生機序を明らかにするために本研究を企画した. 白色家兎に市販のEschrichia Coli 026 B6 5mg/kgを静注して実験モデルを作製し, ついで3時間までの心肺の血行動態諸量測定および肺の病理学的ならびに電子顕微鏡的所見の検索を行つた. endotoxin注入直後よりアナフィラキシー様反応を示し, ついで10分以内に動脈圧はショックレベルに下降した. しかし動脈圧は以後徐々に回復傾向を示したが, 心拍出量は著明な減少を認めた. 最初末梢血管抵抗は減少したが, 心拍出量の減少が強くなるとともに血管抵抗は増加傾向を示した. 血液ガス分析では動脈血酸素分圧および炭酸ガス分圧の下降を示し, 動静脈血酸素飽和度較差は徐々に増加した. 動脈血pHは最初アルカロージスの傾向を示したが以後漸次アチドージスに移行した. すなわち過剰換気で代償できない肺の生理学的シャントの増加と代謝性アチドージスを示した. 肺循環面ではendotoxin注入直後より肺動脈圧の著明な上昇, 全肺血管抵抗の増加, 肺循環時間の延長を生じ, 肺/末梢血管抵抗比は増加した. 病理組織学的に肺は, 顆粒白血球の著明な増加がみられ, 小動脈, 細小動脈, 毛細管全般にわたる高度の血管内凝固を生じており, 随伴的にうつ血性無気肺および惨出を認める. 電子顕微鏡的には血管内のintra-vascular coagulation, 間質の浮腫状拡大, I, II型細胞の変性, 肺胞上皮および血管内皮, 基底膜の破壊などで証明された. 以上より実験的endotoxinショックにおいては著明な肺循環障害を生じ肺機能不全に発展するが, その発生機序は高度の肺血管内凝固によるinflow blockによつてもたらされるものである. |