Abstract : |
われわれの教室で昭和40年以降10年間に337例の僧帽弁疾患手術症例を経験し, うち11例, 3%に巨大左房が合併した. うち1例は僧帽弁・三尖弁2弁置換例で術後低心拍出で死亡し, 残り10例はすべて僧帽弁単独置換症例122例にふくまれ, その頻度は8%であつた. ここで僧帽弁単独置換群をLAV maxを参考として左房正常ないし軽度拡大群(LAV max平均81cc/M2)と中等度拡大群(LAV max平均205cc/M2), 巨大左房群(LAVmax平均589cc/M2)に, さらに狭窄群と閉鎖不全群に分けて検討すると, 巨大左房群の臨床所見として男女比は5:5, 心調律は1:9の割合で心房細動の合併が多く, 術前心胸廓比も他の群に比べ70%以上と拡大し, 病悩期間は平均13.5年と明かに他の群より長かつた. 左房拡大と術前心内圧の関係として, 肺動脈圧および肺動脈楔入圧中間圧は左房拡大の程度にかかわりなく狭窄群に高かつた. これら巨大左房群の術後心胸廓比推移および術後経過では, 6例は依然70%以上心拡大の状態にあつたが, この傾向は術前心胸郭比75%以上, 三尖弁閉鎖不全の合併あるいは術中三尖弁縫縮術の施行された例に認められた. 最長5年6ヵ月の追跡観察では, 70%以上の心胸廓比を示した3例が結婚し, うち2例は出産を経験しており, さらにその1例は現在妊娠継続中である. これらの事実は, 本症の自然歴の最終時期に至らない症例には積極的に手術を行うことにより良好な結果が得られることを示唆している. |