アブストラクト(24巻1号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 重症肺高血圧症を伴う心室中隔欠損症の外科治療
Subtitle :
Authors : 小泉誠二, 堀内藤吾
Authors(kana) :
Organization : 東北大学胸部外科教室
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 24
Number : 1
Page : 24-35
Year/Month : 1976 / 1
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 肺高血圧症を伴う心室中隔欠損症の根治手術適応の判定を試みるとともに, Eisenmenger症候群を含む肺血管病変の重篤例に対する外科治療の可能性について検討した. 肺高血圧合併例の根治手術適応限界を判定するため, 肺/体収縮期圧比(Pp/Ps)0.75以上の84例について手術成績を術前の諸検査結果の面から検討した. その結果, 手術成績に最も密接な相関性をもつ因子は肺/体血管抵抗比(Rp/Rs)であり, Rp/Rs<0.45(53例), Rp/Rs0.45~0.75(21例), Rp/Rs>0.75(10例)の3群における死亡率はおのおの15%, 14%, 90%であつた. この結果から, 肺高血圧症合併例の根治手術適応はRp/Rs値により決定されるのが妥当であり, Rp/Rs0.75を手術適応限界とすべきであるという結論を得た. 手術成績を年齢の面からみたところ, 5歳未満(55例)の死亡率が16%であつたのに対し, 5歳以上(29例)では死亡率38%であつた. また, 根治手術により生存した64例中, 術前のRp/Rs値が0.45以上であつた14例について, 術後遠隔時(平均2年8ヵ月後)における肺血管抵抗の変動を検索したところ, 手術時年齢が5歳以上の症例(10例)では5歳未満の症例(4例)に比し, Pp/Ps値, Rp/Rs値の下降度が明らかに不良であつた. したがつて, 肺血管床の非可逆的変化の進展を防止する意味から, 肺高血圧合併例の根治手術は5歳未満に施行すべきであるという知見を得た. 根治手術適応の拡大を目的として, 逆短絡を有する高肺血管抵抗群の4例に有孔パッチ, 安全弁つきパッチ使用による欠損孔閉鎖を試みた結果, 安全弁つきパッチは術直後の右室機能の保護に役立つことが証明された. したがつて, この方法は手術適応限界附近の重篤例の手術成績向上に有効であるという結論を得た. 根治手術が不可能なEisenmenger症候群の2例に, 臨床症状の改善を目的として片側肺動脈絞扼術を試みたが, 手術効果を認めることができなかつた.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords :
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