アブストラクト(24巻1号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 腐蝕性食道狭窄における食道癌症例の検討
Subtitle :
Authors : 中山隆市*,**, 青木明人*, 岡芹繁夫*, 木村嘉憲*, 工藤学而*, 豊田元*,**, 別所隆*,**, 伊藤豊彦*,**, 笠島学*,**, 小川泰正*, 船崎喬一*, 玉村一雄*, 鳥潟親雄*,***
Authors(kana) :
Organization : *平塚市民病院外科, **慶応大学医学部外科, ***慶応大学医学部病理
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 24
Number : 1
Page : 47-55
Year/Month : 1976 / 1
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 酸あるいはアルカリによる腐蝕性食道狭窄の後期合併症として続発する食道癌の報告は稀であり現在までに外国では1972年のImre&Kopp3)の報告を加えても約40例が報告されているにすぎないが, 本邦ではまだその報告はみられていない. 平塚市民病院外科にて開設以来約4年間に151例の食道疾患を取り扱つたが, 良性疾患90例中3例に食道癌の合併をみた. その内訳けは食道裂孔ヘルニヤ, 胃全摘後食道炎, 腐蝕性食道狭窄に合併した食道癌の各1例である. 今回は腐蝕性食道狭窄に合併した食道癌の1例につき検討した. 症例は, 53歳の女性で20歳時に酸と思われるものを誤飲, 腐蝕性食道狭窄となつたが33年後, 狭窄上部に扁平上皮癌を発生した. 治療としては手術的に右開胸, 開腹下に胸部食道を全摘し胸骨下経路, 頚部にて食道胃吻合術を行い, 現在術後1年7ヵ月を経て健在である. 腐蝕性食道狭窄における後期合併症としての食道癌発生には局所の刺激説が有力であるが, 長期に亘る栄養障害説も否定しえない. また, その発生頻度は統計的に正常人の22倍, 1,000倍という報告もあり, また実際に臨床例で16.4%の発生率も報告されているので本症の定期的追跡調査は必要である. 発癌までの平均潜在期間は25~40年との報告が多いが, 近年本症12年経過後, 15歳にて発癌した扁平上皮癌の1例報告もあり注意を必要とする. その診断に際しては従来と異る嚥下障害を認める場合にはとくに注意し, 食道レ線造影, 内視鏡, 生検などの精査が必要である. 腐蝕性食道狭窄の治療にあたり狭窄食道の予防的切除の是非については結論しがたいが, 食道の手術を必要とする場合には将来, 狭窄部周辺の癌化を考慮し, 食道バイパス手術よりは切除再建術を優先する方が望ましい.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords :
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