アブストラクト(24巻2号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 乳児期心室中隔欠損症に対する常温体外循環による一期的根治手術
Subtitle :
Authors : 草川実, 岡田行功, 中林正人, 庄村赤裸, 山崎順彦, 北村文夫, 滝川喜一, 磯島明徳, 並河尚二, 久保克行
Authors(kana) :
Organization : 三重大学医学部胸部外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 24
Number : 2
Page : 181-187
Year/Month : 1976 / 2
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 1歳未満の乳児期に外科治療を必要とする重症心室中隔欠損症に対しては, 体外循環法の成績が不良であるところから, まず肺動脈絞扼術を行い年長児となつてから二次的に根治手術を行う方法と, 低体温下に一期的に根治手術を行う方法が主として行われてきている. われわれは心室中隔欠損症の如く手術手技的に比較的単純な疾患に対しては, 麻酔時間や手術時間も短かく, 手術中も循環を良好に維持しうる常温高流量体外循環が補助手段としては望ましいと考え, 現在まで45例の乳児心室中隔欠損根治術を体外循環下に施行してきた. その結果手術死亡率は45例中5例死亡11%であり, 必ずしも満足な成績ではないが, 術後管理の安定した最近の30例ではmultiple VSDの1例を失なつたのみで, 死亡率は3.3%と成績の著しい向上をみている. また手術に成功したものの回復は良好であり, 遠隔死亡は1例もみられていない. 術後早期の成績を左右した主たる因子は欠損孔の部位で, 心尖部に近い筋性部に大欠損を有する3例は何れも右心不全, または肺不全にて死亡した. 肺高血圧の程度および欠損孔の大きさは手術成績に影響する因子ではなく, 術後合併症の主たるものは肺合併症であつた. 術後肺合併症の主たる原因は術前から存在した呼吸器感染症であつたが, 積極的な呼吸管理によつて7例中1例を失なつたのみで他はすべて救命しえた. 体外循環法はテンプトロールQ130とローラーポンプを用い, 常温高流量潅流(2.7L/m2/min)を行うことにより, 動脈圧を60mmHg以上に維持し, Oxygen transferを7ml/kg/min前後に維持することにより臓器循環を良好に保ち, 組織での酸素負債の発生を防ぐことが重要な点であると考えており, このためには体外循環中の動静脈圧および血液ガスの連続モニターが有用であつた.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords :
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