Abstract : |
大動脈炎症候群の死因として, 近年, 心不全が重視されるようになつた. 高血圧, 大動脈弁閉鎖不全, 冠動脈狭窄などが心不全の主な原因である. 本論文では大動脈弁閉鎖不全を起す機序を詳述し, 手術にあたつての注意点と対策を述べた. また, 冠動脈病変や心筋障害は大動脈弁置換術にあたり考慮しなければならない問題であり, かつ, 大動脈炎症候群の大動脈弁閉鎖不全に合併する可能性が高いので, これらについても言及した. 大動脈炎症候群は大動脈とその主要分枝に病巣が存在するが, 症例により病変の部位や範囲が異なり, 複雑な臨床所見を呈するので, その概念の変遷を述べて理解を容易にした. 大動脈炎症候群に起因する大動脈弁閉鎖不全は高頻度に発生し, 手術を要する重症例も少なくないが, 手術報告例は少なく, 問題点は多い. 著者らは手術例3例, 非手術例2例に検討を加えて, 手術の有用性を述べるとともに, CRPが入院時に弱陽性であつたのが, 術直前に強陽性になり急性炎症が再燃した症例に手術を行い, 術後縫合不全のための人工弁周囲よりの逆流によつて失なつたので, その縫合不全の機序を述べて注意をうながした. また, 手術時期の決定にCRPと血沈の変化を経時的に調べることが重要であり, とくに発症後10年以内の患者では注意を要することを述べた. |