アブストラクト(24巻2号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 常温希釈体外循環時の全身血流分布動態(radioactive microsphere法による検討)
Subtitle :
Authors : 妹尾嘉昌*, 高橋俊二郎*, 江原芳男*, 寺本滋*, 笠井敏雄**, 川上俊爾**, 小杉功***, 山口佳晴***, 岡田和夫***
Authors(kana) :
Organization : *岡山大学第2外科, **岡山大学三朝分院外科, ***帝京大学麻酔科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 24
Number : 2
Page : 199-206
Year/Month : 1976 / 2
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 開心術のための体外循環は血行動態・ガス動態が検討され人工心(送脱血量)操作, 肺(ガス吹送量)操作とも適正な方法が確立されている. しかし頻度は減少してはいるが, いまなお術後低心拍出, 腎・呼吸不全などがみられる. 術前より心肺負荷を有する患者ではあるが, 体外循環も必ずしも生体にとつて適正とはいえない. それらの原因解明の手段として人工心よりの送血が全身全臓器組織へどのように分布しているか, また生体心拍出とはどのような相異があるかを, radioactive microsphere法によつて検討した. 10頭の雑種成犬にpentobarbital麻酔に, pancuronium bromideを併用し, 大腿動脈送血・落差脱血・常温・20%希釈体外循環を行つた. 術前心係数は平均4.35l/min/m2, 人工心潅流係数は2.32l/min/m2, であり, 術前PaO2 82.8mmHg, PaCO2 38.6mmHg, 潅流中PaO2 200~140mmHg, PaCO2 36.6~40.3mmHgであつた. 体外循環時の血流再分配を完全体外循環開始後5分でみ, 固有循環時を100とし血流分布率を比較すると, 脳(154%), 肝(287%), 副腎(250%), 総肝血流(134%)が増加しており, 実際の血流量では副腎が149%に増加し, 脳・肝は増加傾向, 総肝血流は不変であつた. 一方心(38%), 膵(48%), 脾(41%), の分布率は減少し, 血流量をみてもそれぞれ23%, 34%, 32%に減少しており, 分布率では有意な減少をみなかつた腎, 筋もそれぞれ58%, 48%と有意に減少した. 他のものは分布率・血流量とも減少傾向をみたが統計上では有意な変化ではなかつた. 循環5分後と90分後とを比較し経時的変化の目安とした. 肝動脈への分布率・血流量, 総肝血流の分布率がさらに増加し, 冠動脈への分布率・血流量が減少したままであるが, 他のものは固有循環より体外循環への移行時と並方向の変化, すなわち術前の分布率・血流量へ復帰する傾向がみられた.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords :
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