アブストラクト(24巻2号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 開心術における心筋保護の検討-とくに心臓局所冷却法について-
Subtitle :
Authors : 今村洋二*, 竹内成之*, 相馬康宏*, 勝本慶一郎*, 山本省吾*, 吉津博*, 森下幹人*, 井上正*, 渡辺昌**
Authors(kana) :
Organization : *慶応義塾大学外科, **慶応義塾大学病理
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 24
Number : 2
Page : 221-228
Year/Month : 1976 / 2
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 開心術に際して, 一般的には, 間歇的大動脈遮断法, または冠潅流法が用いられている. しかし, これらの方法には, 時間的制約や解剖学的困難性, 技術的繁雑さが伴い, 満足すべき潅流が行えず, 心内膜下硬塞などを認める例がある. いずれも至適潅流の維持に問題点が多い. 一方, 心筋の冷却は大動脈遮断時間の延長を可能にし, 心筋保護の立場からも有用と考え, 手技も容易で安全と思われる直接心局所冷却法を導入し, 臨床応用を行つた. 心局所冷却法は, 体外循環下に上行大動脈を遮断し, 0~4℃リンゲル液を心内外に注ぎ, 弛緩性心停止を得るまでつづけ, 以後, 心筋温をモニターし, 20℃以下に保つように冷却を繰返した. 60分後に, 一時遮断を解除し, 充分な拍動を得るまでつづけた後再び大動脈を遮断, 心冷却を行つた. 対象は選択された症例32例であり, 先天性24例, 後天性8例である. 平均体外循環時間は, 先天性87分, 後天性102分, 平均1回大動脈遮断時間は先天性44分, 後天性51分であつた. 2例を失なつたが, 術後, 心拍動不良例や, LOS例はなく, 本法の安全性が臨床的に確認できた. 一方, 冷却後の心筋の変化を電顕的に検討したが, sarcoplasmaに若干の浮腫を認めたほかには, ミトコンドリアの膨化崩壊もなく, sarcomereの配列も正常を保ちsarcoplasmic reticulum, intercalated disc, desmosomesなどにも変化を認めなかつた. 心局所冷却法は, 術中伝導路損傷の判定が遅延する傾向がみられ, また側副血行量の多い疾患では, 心筋温の上昇が早く, 頻回の冷却を必要とし, かつ廃棄される血液量が多くなる欠点もあるが, 一般には大動脈遮断時間の延長が可能であり, とくに大動脈切開例に有用であり, また充分な心弛緩が得られ, 全体外循環時間の短縮が可能となるなどの長所を有している. 現在, 著者らは, 心局所冷却法を併用した大動脈遮断法は60分以内では, きわめて安全確実な方法であると考えている.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords :
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