Authors : |
北村惣一郎*, 川島康生*, 宮本勝彦*, 小林亨*, 島崎靖久*, 曲直部寿夫*, 児玉和久**, 扇谷信久**, 南野隆三**, 戸崎洋子*** |
Abstract : |
26歳男子で左主冠状動脈, 左前下行枝, 右冠状動脈に多発性の動脈瘤の発生と冠状動脈の閉塞, 狭窄を来し心筋硬塞を発生した症例を経験した. 労作性狭心症を有し, 冠状動脈造影所見から血栓による瘤の閉塞は直ちに死亡に連ると考えられたので右冠状動脈と左前下行枝に2本の大伏在静脈グラフトを移植した. 本例の動脈瘤の原因は確定できなかつたが, 血管炎の可能性が最も高いと思われた. 2本のグラフトは良好に開存し, 術後10ヵ月の現在臨床的には無症状で日常生活に支障はないが, 後下行枝基始部にも小動脈瘤を認めており, 今後の精密な追跡が必要である. 本例は冠状動脈瘤を発生し, 小児の心筋硬塞や突然死の原因として大きな問題となつているmucocutaneous lymphnode syndrome(MCLS)後遺症の可能性もあり, 冠状動脈瘤に対する本邦初の外科的治験例であるので報告した. 冠状動脈瘤は稀な疾患であり, 米国における報告例の約50%は動脈硬化性, 20%は先天性奇形, 残る30%は動脈炎, mycotic embolism心内膜炎, 梅毒, リウマチ性疾患, 外傷などに基因するとされている1)2). |