Abstract : |
胸部下行大動脈の血流を長時間に亘つて遮断すると, 中枢側の高血圧による脳, 心臓への負荷, 遮断末梢側では脊髄, 腎の乏血による機能障害, 遮断解除時のショックなど重篤な合併症が高率に起る. したがつてそのための補助手段として種々の方法が考案されたが, なかでも左心バイパス法は最も広く応用, 普及されてきた. しかし現在なお左心バイパス法の至適潅流条件に関しては一定の結論が得られていない. さらに拍動式ポンプを用いる左心バイパス法の報告は極めて少ない. そこで著者は, 雑種成犬20頭を用いて実験を行い左心バイパス法の至適潅流条件を決定するとともに, 教室で考案されたベロー型拍動式人工心による左心バイパス法について検討を加え次の結論を得た. 1. 胸部下行大動脈遮断時における左心バイパスの至適潅流量は60~80ml/kg/minが適当で, その最低許容限界は50ml/kg/minである. 2. 左心バイパスに当つては可及的太いカニューレを左心房に挿入するとともに貯血嚢をおいた閉鎖式回路により適正な潅流量を得ることが可能で, 180分に亘る潅流を安全に実施できる. 3. 教室で考案された拍動式人工心は, 左心バイパス法にも応用可能であるが, 1回拍出量を可及的少くして回転回数を60~70回/分とすることが安定した血行動態を度るために必要である. |