アブストラクト(24巻3号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 心筋硬塞急性期の外科的治療に関する実験的研究
Subtitle :
Authors : 後藤武, 麻田栄
Authors(kana) :
Organization : 神戸大学医学部第2外科教室
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 24
Number : 3
Page : 311-322
Year/Month : 1976 / 3
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 左冠動脈前下行枝のmultiple ligationにより, 左室前壁に心筋硬塞を作成したpower failure犬に対して, 心筋硬塞の治癒過程を考慮して, 硬塞作成後2日, 1週, 2週および1ヵ月目の4時点で硬塞切除術を実施し, 硬塞切除術前後の血行動態ならびに心電図の推移, 手術成績と手術合併症および切除後心筋縫合部の病理学的検索から, 急性期心筋硬塞に対する硬塞切除術の有効性とその実施時期との関連について検討を加え, 以下の結論を得た. 1)心筋硬塞急性期のpower failureに対して, 硬塞切除術は安全に実施可能であり, とくに心不全の進行を阻止しうる点で有効であつた. すなわち, 硬塞切除術直後でも血行動態は良好に保たれ, 長期間の観察から, 切除術後数ヵ月経過するうちに左室機能が次第に改善されることが判明した. また硬塞切除術後には心室性不整脈がほとんど消失し, ischemic patternの改善も認められ, 硬塞切除術の有効性が心電図所見からも立証された. 硬塞切除術後1週間以上生存率は81%と高く, 硬塞切除術の安全性が確認された. 硬塞犬の大半がpower failureに基づく心不全で死亡したのに反し, 硬塞切除術後には心不全による死亡が少なかつた事実から, 硬塞切除術が心筋硬塞に随伴する心不全の進行を阻止しうることが実証された. なお硬塞切除術後数ヵ月経過して, 切除部位を病理学的に検索したところ, 心内膜の完全修復と縫合部心筋の治癒が確かめられ, 硬塞切除術の術式に問題のないことも明らかになつた. 2)急性期硬塞切除術の実施時期としては, 硬塞発生後1週以内でも十分に可能であるが, 2週以降に実施する方がやや有利であつた. すなわち, 硬塞発生後2週以降に硬塞切除術を実施すると心不全による死亡が少なく, 手術合併症としての心筋縫合不全がみられず, また血行動態の面でも, 硬塞発生後1週以内の硬塞切除例に比しやや優れていることが判明した.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords :
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