アブストラクト(24巻7号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 心筋硬塞後の心臓破裂 とくに臨床診断と外科治療を中心に
Subtitle :
Authors : 後藤一雄, 今野草二
Authors(kana) :
Organization : 東京女子医科大学附属心臓血圧研究所
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 24
Number : 7
Page : 909-917
Year/Month : 1976 / 7
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 東京女子医科大学附属心臓血圧研究所のCCUで過去6年間に603例の心筋硬塞患者を収容したが, そのうち17例の心臓破裂例を経験した. 心臓破裂は心筋硬塞後, 突然発症し, 瞬時にして死の帰転をたどるという, 最も重篤な疾患である. この心臓破裂に対して有効な治療法を確立するため, 当研究所のCCUの症例の臨床像および病理学的検討を加え, それを基礎として確実な破裂孔閉鎖法を考案し, 実験を行つた. 1. 心臓破裂は硬塞後10日以内に大半の症例が発生していたので, 少なくとも硬塞後10日以内は迅速な外科的処置ができる体制を整えておく必要があつた. また, 破裂直前までは血行動態が安定していた症例が大半であつたため, 破裂によるタンポナーゼが寛解できれば心臓の収縮力も回復できると考えられた. 2. 心臓破裂は左室前壁心尖部付近に発生していた症例が大半であり, 脆弱な心筋硬塞内をななめ一直線状, またはジグザグ状に破裂を起していた症例が大半であつた. したがつて, 脆弱な硬塞心筋内に発生している破裂孔の閉鎖は単純な縫合法ではきわめてむずかしい. われわれは, 破裂部位の近くに健常な心室中隔が存在していることに着目し, 左室全周にわたつて縫合糸をかけ, その糸を縫縮することによつて破裂孔を閉鎖する方法を考案した. この方法によれば, 健側心筋にも縫合糸がかかるので硬塞心筋にかかる張力も減り, しかも左室全周に縫合糸がかかるため, あらたに破裂が他の部位に発生するのを予防できる. 実験結果はきわめて良好であり, 脆弱な硬塞心筋内に発生した破裂孔を縫合閉鎖する方法としては十分に実用性があると考えている.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords :
このページの一番上へ