Abstract : |
昭和32年8月から昭和49年9月までに摘出手術された28例の胸腺腫について臨床病理学的研究を行つた. 手術所見で非浸潤群の16例は無症状が多く, 組織所見ではリンパ球型9例, 混合型2例, 上皮細胞型4例, 不明1例で腫瘍細胞に悪性像はなく, 予後は良好である. 浸潤群の12例は縦隔圧迫による症状を訴えるものが多く, 組織学的にはリンパ球型1例, 混合型1例, 上皮細胞型3例, 不明1例, リンパ肉腫型1例, ゼミノーム型5例で予後は腫瘍死が多かつたが術後照射はゼミノーム型に有効であつた. 重症筋無力症を合併した5例は組織学的に胸腺腫の上皮細胞が円形でグリコゲンを含み全例に血管周囲腔拡大を認め, 検索しえた胸腺3例にリンパ濾胞が認められた. 手術所見でも組織所見でも良性であつた胸腺腫の2例に再発がみられ, 初発時と再発時とでは組織所見上の差はほとんどなかつた. 1例は再手術により腫瘍と胸腺を全摘し術後1年4ヵ月再発なく, 他の1例は再手術にて腫瘍と胸腺が全摘出され術後順調に経過していたが1年後に初めて重症筋無力症を発症し現在治療中で日常生活にさしたる支障はない. 以上の成績より主として胸腺腫の良悪性の判定と予後, 良性胸腺腫の再発, さらに胸腺および胸腺腫を全摘出後の重症筋無力症発症について考察した. |