アブストラクト(24巻7号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 三尖弁閉鎖症に対する完全右心バイパス手術の血行動態的検討-とくに術後遠隔時の血行動態および右心房機能の関与について-
Subtitle :
Authors : 松田暉*, 川島康生*, 藤田毅*, 森透*, 北村惣一郎*, 高野久輝*, 横田博雅*, 友国隆*, 曲直部寿夫*, 小塚隆弘**
Authors(kana) :
Organization : *大阪大学第1外科, **大阪大学放射線科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 24
Number : 7
Page : 955-966
Year/Month : 1976 / 7
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 三尖弁閉鎖症3例に対し, 1例にFontan氏手術, 他の2例にKreutzer氏手術を施行し, 後者の2例に成功した. 症例の年齢は10歳, 11歳および17歳で, 解剖学的形態はEdward-Burchel分類でFontan氏手術を行つたものが, II-a型で他の2例はI-b型であつた. グラフトは弁付同種大動脈を用いた. 術中の検索では, グラフトにおける血流波形は心房収縮に一致した明瞭な拍動を示した. 2例の術後4ヵ月および1年2ヵ月までの遠隔時血行動態を検討すると, 右心房平均圧は10~13mmHgと軽度上昇し, 圧波形では16~22mmHgに達するa波を認めた. 肺動脈でも同様の圧波形を示したが, 心房収縮時に4~5mmHgの圧差を認めた. 心拍出量は良好な値をとり, 心指数で安静時に2.97~4.62L/min/m2であり, 運動負荷にて4.39~5.02L/min/m2へと増加した. 右房造影では両者とも造影剤の肺動脈への流れは良好であつたが, 移植弁の動きは不良であつた. cineangiogramでは心房収縮は良好に維持されている事を認めたが, 上下大静脈への逆流も見られた. 犬において三尖弁を閉鎖し, 右房肺動脈内にバイパスを作成する実験を行い, 主として術後急性期の血行動態を心房細動を誘発して検討した. 心房細動下でも平均大動脈圧は8%, 平均大動脈流量は19%減少したにとどまり, これはバイパス作成前のコントロールでの変動と大差はなかつた. これらの臨床的および実験的検討より, Kreutzer氏手術による三尖弁閉鎖症の機能的根治手術は, 術後良好な血行動態を示していて, 充分満足し得るものと考えられる. この方法による完全右心バイパス手術においては, 右心房の収縮は重要なものであるが, 不可欠なものとは言い難いと考えられる. また静脈還流のメカニズムより考えると, 左心のvis a tergoとしての働きが主体をなしていると考えられる.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords :
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