Abstract : |
Pacemakerによつて心拍制御を受ける患者にとつて, その心拍数が画一的であつてよいのかとの疑問から, 著者は教室におけるpacemaker植込みを必要とした61例のうち, 臨床状態からみて計測を断念した9例を除く, 52例(62回)について, rate-output curveを求め, 同時に計測した右房圧, 右室圧, 肺動脈圧とともに, その生理学的意義を検討した. Rate-output curveを4型(I型flat type, II型peaked type, III型sloped type, IV型miscellaneous type)に分類したところ, その分布はI型30.6%, II型58.1%, III型0%, IV型11.3%であり, II型が約60%を占めた. 右房平均圧をI型のplateau部の最少心拍数, II型のpeak部の心拍数でみると, その値はおのお平均4.81±1.00mmHg, 5.38±1.17mmHg(P<0.10)であり, II型の値がやや高い. RVEDPを同様に上記の心拍数でみると, おのおの平均5.4±2.2mmHg, 8.8±3.8mmHg(P<0.10)であり, II型の方が有意に高値を示した. これはI型, II型の生理学的意味から考え, 興味ある事実である. Pecing下であつても, 右房平均圧はRVEDPと相伴つた推移を示したことから, 右房平均圧についても, 同様に両者の生理学的意味の差を考えられる. 肺末梢動脈平均圧も, 同様の心拍数ではともに低下し, おのおの平均15.2±2.6mmHg, 16.9±1.8mmHg(P<0.10)でりあ, 左心系の心機能を反映しているものと推測される. 以上のように, pacing下のrate-output curveと右心内圧の検討を行つたところ, 心拍出量を最大にすることが, 循環生理のうえで合目的であり, 少なくとも, 右心血行動態面で不利益をもたらすものではないとの見解に至つた. しかし, 今後この方面での検討すべき問題は多くある. |