アブストラクト(24巻9号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 肺シンチグラムからみた僧帽弁交連切開術の術後経過
Subtitle :
Authors : 平松隼夫, 弥政洋太郎
Authors(kana) :
Organization : 名古屋大学第1外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 24
Number : 9
Page : 1105-1118
Year/Month : 1976 / 9
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 閉鎖式僧帽弁交連切開術を施行した207例を対象として, 肺シンチグラムを中心とした諸検査を行うとともに, その遠隔成績を追求した. 僧帽弁狭窄症における上下肺血流量比(U/L)は, 左房平均圧(LAMP)と良く相関しγ=0.943(P<0.005). LAMP(mmHg)=14.24(U/L)+3.99であつた. 一方, 僧帽弁閉鎖不全症では, U/L比とLAMPとの相関は不良でありγ=0.603(p<0.02)であつた. U/L比の推移より術後経過をみると, 術直後のU/L比は術前と比較して著明に下降するが, その後しだいに上昇する傾向を示し, 術後10年以上では一層高くなりその平均は1.0以上であつた. これは, NYHA分類による術後経過において, 年を経るにしたがい経過不良例が増大する傾向と一致した. 再手術例では, 早期にU/L比が高くなるが, 再手術後はふたたびU/L比の下降をみせ, 症例の75%はI°II°であつた. 予後を左右する因子のうち, 弁の石灰化および開大不足の症例の遠隔時でのU/L比は, いずれも平均値で1.0以上であつた. U/L比L比と諸検査値との検討では, 心胸郭比が60%以上, %肺活量が85%以下, 予備呼気量が1200ml以下の症例および心房細動例に, U/L比が1.0以上を示すものが多くみられた. 超音波検査における僧帽弁前尖後退速度とU/R比との相関は, γ=-0.786(p<0.001)であり, 僧帽弁前上の振幅が20mm以上の症例のU/L比は, いずれも1.0以下であつた. 閉鎖式交連切開術は, 僧帽弁狭窄症にたいする優れた外科療法であるが, その手術予後は, 弁の病態およば基礎疾患の動きにも影響され, 経過不良例が増加することも避けられないと思われる. これを早期に予測する検査法として, non-invasiveで左房圧を反映する肺シンチグラムは, 有益であり, U/Lが1.0以上を示す症例には, 注意深い観察および精密検査が必要と思われる.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords :
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