アブストラクト(24巻9号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 心筋肥大の研究〔I〕仔犬使用による左心室肥大の作成とその臨床的意義―とくに自然経過, 突然死および左室筋重量について―
Subtitle :
Authors : 安倍十三夫, 大堀克己, 和田寿郎
Authors(kana) :
Organization : 札幌医科大学胸部外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 24
Number : 9
Page : 1119-1126
Year/Month : 1976 / 9
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 左心室の肥大は種々の心疾患に見られるが, 臨床上肥大心の自然予後, 突然死の検索は困難な事が多い. 著者は仔犬を使用し, 上行大動脈に狭窄を作成し, 圧による左室の負荷が仔犬の成長につれて増大する事に注目し, 左心室肥大の作成を試み, 同時にこれら仔犬を術後長期にわたつて注意深く観察し, 肥大心の自然予後, 突然死の発生, 心電図および左心室筋の重量変化を経時的に検討し, 左心室肥大の第II期の比較的安定期の作成を可能にし以下の結論を得た. 1)左心室肥大の選択的作成は生後7~8週, 体重2.5~3.5kgの仔犬を用い, 大動脈の圧差15~20mmHgの狭窄で可能であつた. 2)本実験で術後6ヵ月以上の生存は58例中. 41例(70.7%)であり, 最長生存は術後27ヵ月目である. 術後の剖検で大動脈絞扼部下破裂6例, 原因不明で突然死亡した症例は8例に認めた. 3)左室肥大基準は左室(LV)対右室(RV)重量比で表し, この比は成犬で1.43±0.05であり, 術後3ヵ月(1.89±0.03)間に有意差を認めるも, 術後3ヵ月と6ヵ月(1.98±0.08), 9ヵ月以降(2.01±0.04)との間に有意差はなかつた. すなわち左室肥大は術後3ヵ月以内に急速に進展し, 術後6ヵ月以降は肥大の進行は停滞し, この時期以降に比較的安定期(第II期)に入る事が証明された. 4)術後3ヵ月以上の生存39例中, 心電図上肥大を認めたのは33例であつたが, 心電図所見と術後の経過および剖検後のLV/RV重量比とに必ずしも相関々係は認めなかつた. 5)術後6ヵ月以降の血行動態では大動脈絞扼部に平均120mmHgの圧差を認めたが, 左室と左室流出路, 右室と右室流出路間に安静時, 薬剤負荷でも圧差を認めなかつた. 6)この実験動物は従来の非生理的条件下で限られた研究に対し, より生理的に心筋肥大の研究に利用可能な理想的材料である.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords :
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