アブストラクト(24巻9号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 僧帽弁交連切開術々後5―15年経過例の検討
Subtitle :
Authors : 平明, 西村基, 尼子春樹, 大坪睦郎, 児玉治彦, 天辰健二, 松窪尉雄, 川島裕雄, 丸古臣苗, 森下靖雄, 屋良勲, 寺師一郎, 秋田八年
Authors(kana) :
Organization : 鹿児島大学医学部第2外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 24
Number : 9
Page : 1127-1133
Year/Month : 1976 / 9
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 1959年から1969年にいたる10年間に行つた148例の僧帽弁交連切開術症例(術後最短5年, 最長15年経過)を対象とし, 1)従来までのfollow upの資料と今回行つた検診およびアンケートの成績を加味した総合的な検討, 2)今回のアンケートに回答が得られたものの成績, 3)今回検診を行い得たものの成績の三項目を以つて術後の状態を検討し評価を行つた. これらの症例はNYHA分類のII度からIV度にわたり, 手術時に20歳以下であつた症例が特徴的に多く39例(26%)を占め, 最年少者は10歳であつた. 全体の手術死は8例, 病院死1例, 晩期死11例で6例に再手術を行つた. 術後5-9年経過例の96%, 10-15年経過例の83%が生存している. 初回手術に用いられた術式は主として閉鎖式で開心例は9例にすぎない. 成績の評価にはNYHA重症度分類を平均値の形で用いた. 全症例の術前平均重症度は2.6であつた. 心房細動が60例(40.5%)にみられ, 左房内血栓は27例に証明された. 術前の重症度は発症から手術までの病悩期間に関連し, II度で平均74.6ヵ月, III度91.5ヵ月, IV度105.3ヵ月であつた. 今回アンケートのみで評価したものが37症例でこれらの術前後平均重症度は2.5から1.8へと推移し, 改善を示したものが62%であつた. 20歳以下をとりあげると80%が改善を示し, 平均重症度は2.2から1.3へと移行を示した. 今回の検診のみで評価したのは39例で, 重症度は2.7から1.6へと推移を示した. 10年以上生存例では3.0から1.9へ, 10年未満では2.1から1.6へと移行し, 全体の77%が改善を示した. 心胸廓比60%以上の症例では2.0, 60%以下では1.5の平均重症度で, 細動例では1.9, 洞調律例では1.2であつた. 37症例についてMinesota Impedance Cardiographyで心拍出量を測定したが, I度では3.54L/min/m2, II度以上では2.74L/min/m2, 細動例では2.52L/min/m2, 洞調律では4.OOL/min/m2を示した. これらを通じて閉鎖式術式を主とした僧帽弁交連切開術の成績が, 今日の批判に十分耐え得るものであることから, 症例を選んでの閉鎖術式の選択はなお意義あるものといえる. 若年者症例が多数あることは地域的な特性として解釈した. 病悩期間の長短が重症度に関連したこと, および若年者症例の術後成績が良好なことから, 発症後早期の手術が望まれる. Minesota Impedance Cardiographyによる心拍出量測定の成績は臨床症状とよく一致し, しかも患者にとってnoninvasiveな検査法なので術後follow upに活用が期待される.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords :
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