Abstract : |
本論文はわれわれが過去11年間に体外循環を用いて根治術を行つた心室中隔欠損症(VSD) 272例について, 臨床検査成績ならびに術中所見を参考に, 若干の検討を加え, 同時にわれわれがたどつた手術適応, 手術手枝について反省を加えたものである. 臨床検査成績, 術中所見からはsmall VSDはPp/Ps Qp/Qsがよく相関を示し, 殆どがPp/Ps<0.5 Qp/Qs<2.0であつた. large VSDではPp/Psは0.45以上のものが多いが, QP/Qsは必ずしも大きくなく, またPp/Psが高くてもRp/R3はかなりばらつきがみられた. しかし重症度をよく反映していたものはRp/Rsといえる. 手術手技に関しては初期には中隔の左心室側にpatch縫着を行つた. この際double string sutureを用い刺激伝導系の傷害に配慮したが, 通常の右心室側patch縫着に比し縫合糸を心室中隔を貫通させることから伝導系損傷の危険が高く, 現在はすべて一般に行われている右心室側patch縫着を行つている. AIを合併する症例ではいかなる弁形成術を行うにせよ, AIの修復も完成させたのちVSDを通してその完全さを確認後にVSD閉鎖を行うべきである. 術後の合併症として一過性房室ブロックのあつた症例, 術後partial bilateral bundle branch blockを残す様なものには厳密なfollow upを要する. 外科的房室ブロックを来たした症例で現在生存中の2例はいづれもHis bundle electrogram 上H-Vのブロックであつた. 手術適応に関しては初期にはsmall VSDでも左室肥大, 心陰影増大のあるものは手術を行つたが, 現在ではこの様な症例は, AIの合併あるいは症状の増悪のない限り経過観察を行つている. 高肺血管抵抗症例に対しては左-右短絡が存在する限り手術適応としている. |