アブストラクト(24巻9号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 左上大静脈遺残症とその血流処置:体外循環中の単純遮断と左房還流症における単純結紮術の安全性に関する再検討
Subtitle :
Authors : 大沢幹夫, 小助川克次, 臼田多佳夫, 川副浩平*, 谷本欣徳*, 原田昌範*, 田中徳太郎*
Authors(kana) :
Organization : 聖隷浜松病院外科, *東京女子医大心研外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 24
Number : 9
Page : 1143-1156
Year/Month : 1976 / 9
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 左上大静脈遺残合併症例では体外循環による右心系の開心術を行うさい, 従来, 左腕頭静脈による右上大静脈との交通適否が重視されていた. 適当な交通がないとき, または右上大静脈が細い場合にこれを単純に遮断することは, 重篤な脳障害を併発するものと危惧され, また左上大静脈左房還流でも, かかる条件下では単純結紮術の危険性が指摘されていた. しかしながら臨床の実際においては, 従来の血流処理の基本方針に若干疑問を感ずる面もある. そこでこの問題を再検討する目的から, 動物実験と臨床実験を重ねてきた. 家兎で左上大静脈を結紮した結果, 交通静脈の乏しい場合には内圧上昇程度がやや高い傾向にあつたが, 当初は頭部の静脈へのrun offも加わり, 次第に減圧され, 右側上大静脈だけで頭部と頚部の静脈循環が代行されることを知つた. 他方, 左上大静脈遺残症10例におけるballoonによる閉塞実験でみると, 閉塞直後の内圧は280~500mm水柱と上昇するが, 左腕頭静脈の交通がなくても経時的に減圧されてくる. この状態は, 内頚静脈・椎骨静脈・頭蓋底静脈洞へ逆行するユニークなrun offや, 頚部・縦胸静脈などへのさまざまなrun off routesの造影解析によつて裏付けられた. 一方, 左上大静脈単純遮断による11例の体外循環でみると, たとえ右側が細い場合でも, 体外循環中の左上大静脈内圧は閉塞実験中よりは低く, また脳合併症もなく, 検討しえた脳波からもその安全性が裏付けられた. それゆえ, 本症の合併例では, 閉塞による内圧測定よりも, 左右上大静脈の太さの比較が大切で, 太さにして左の2/3以上の右上大静脈が存在するならば, 腕頭静脈による交通がなくても, 単純遮断による体外循環が安全に行えると判断している. また単純結紮術によつて発生する軽い脳波の変化は一過性で, 上昇した内圧も3日以内に正常値へ近づくので, 同様条件の右上大静脈が存在するならば, 左上大静脈左房還流症の修復は心嚢内の単純結紮術でよいと考える.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords :
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