Abstract : |
外科手術侵襲の生体に及ぼす影響を把握することは重要な問題である. 外科手術侵襲のSteroid hormone代謝への影響は比較的古くから検討されているが, これらはいずれ もGlucocorticoidに関するものであり, 性腺系への影響は未知であるといつてよい. 胸部手術をうけた成人男子について, 血中LH, Testosterone, 尿中-17KS, 17-OHCS, を術前術後経日的に測定し, さらに睾丸のみの機能を明らかにする目的でAdrenal Suppressionを行つた症例について, 胸部手術による血中LH, Testosterone, 尿中Steroidsの変動を測定して, 以下の結論を得た. 血中Testosteroneは術後3週間は術前値に比して有意に低値である. しかし, この間の血中LHは減少しておらず, 尿中17-KSとくに11-deoxy-17-KSが減少していた. このことから, 術後には睾丸からのTestosterone分泌は減少しており, この減少は血中LHの低下による二次性変化ではないと考えられる. さらにAdrenal Suppression例においても, 血中Testosteroneが術後減少しており, 尿中Steroidsでは5β-Pregnane-3α, 17α, 20α-triolは術前値と差がなく, 11-deoxy-17-KSが減少していることが明らかになつた. このことから睾丸からのTestosterone分泌減少の原因は睾丸におけるTestosterone合成過程で17α-OH-ProgesteroneからTestosteroneへの合成段階に抑制があると考えられる. |