アブストラクト(24巻9号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 出血性ショックと肺不全に関する研究―脂質代謝を中心として―
Subtitle : 特掲
Authors : 上林正勝, 亀谷寿彦
Authors(kana) :
Organization : 東邦大学医学部第1外科学教室
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 24
Number : 9
Page : 1201-1217
Year/Month : 1976 / 9
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 実験的に難治性出血性ショック状態を作成して, 肺洗滌液中の表面張力の変動の検索, 血中脂質の変動の検索, 投与した14C-palmitic acidが肺でどのように合成されて肺胞表面へ転送されていくかの検索などを行い, ショック早期の肺不全発生に脂質代謝がどのように関わりあっているかをショック前後で比較検討し, 以下に述べるような結論を得た. 1. 肺洗滌液の分析でStability index(SI)は, ショックで有意に低値を示す. これは, Pulmonary surfactant(PS)活性がショック前には安定性を示しているが, ショックによって不安定化することを意味し, このことは, 無気肺を生じ易い状態を作り肺不全発生を促すと解された. 2. ショックで血中NEFA, triglyceride(TG)は増量し, 燐脂質, total cholesterol, 総脂酸分画は減少を示す. また混合静脈血, 動脈血中の各脂質含量の変化率を比較すると, NEFA, TG, 燐脂質, free cholesterol, C16-0, C18-0, C18-2は常に混合静脈血中で高値を示した. 3. 投与した14C-palmitic acidは, ほとんどが燐脂質(とくにpalmitic acidを主構成型分とする phosphatidyl choline(PC))に合成されて肺胞表面に転送され分布しており, ショック前後における比較で差異を認めなかった. 2. における混合静脈血中に増量した各脂質は, 3. の14C-palmitic acid投与の実験結果と考え合わせてショック前後に関係なく, 肺で積極的に脂質合成(特に燐脂質合)に利用され, 肺胞表面へ転送されると考えられた. これらのことから, ショック早期の肺不全形成(PS活性が不安定化すること)は, 脂質代謝障害(特に燐脂質合成障害)の関与で生ずるのでなく, ショックそのものによる肺での血行動態的変化により招来されると推測された.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords :
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