| Authors ： |
川島康生*, 宮本勝彦*, 松田暉*, 森透*, 北村惣一郎*, 友国隆*, 高野久輝*, 橋本聰一*, 藤田毅*, 曲直部寿夫*, 小塚隆弘** |
| Abstract ： |
大血管転位を伴つた単心室症例に対して, 根治手術を施行した5例について報告した. 年齢は2歳乃至20歳平均7.4歳で, 解剖学的根治手術を4例に, 機能的根治手術を1例に行つた. 解剖学的根治手術を行つた症例はいずれもII型単心室（Van Praaghらのc型）であり房室弁は2つ存在するもので, 全例d-loop, atriovisceral situs solitusであつた. また全例大動脈はd-positionであつたが, 2例は両大血管右室起始（d-DO）であつた. この2例についてはstraight patchで中隔を作製したが, その際patchの一部を右室側に膨隆させ, 大動脈弁口が左室側にくるようにした. 両大血管右室起始を伴わない2例中1例では心房内で動静脈血の転換を行つたうえ, straight patchで心室中隔を作製した. 他の1例ではspiralなpatchを用いて心室内で血流の転換を行うように新しい中隔を作製した. 最後の1例のみを救命し得, この症例は術後の検査において軽度の短絡の残存（肺体血流量比1.44）を認めるが, 術後9ヵ月の現在症状は著しく改善し, 元気に日常生活を送つている. 機能的根治手術例は共通房室弁を有し, 肺静脈血のみをこの房室弁に導くように心房中隔を作製したうえ, 弁つき同種大動脈を用いて右心房肺動脈間にbypassを作製した. 心房への静脈還流路が錯綜していたために, 新しい中隔が肺静脈還流を阻害する結果となり死亡した. 従来の報告にみられた大血管転位を伴う単心室症に対する根治手術成功例についてとくにその手術方法の選択に関して検討を行うとともに, 本症の定義と分類に関する見解を述べた. |
