Abstract : |
チアノーゼ性心疾患に対する短絡手術術式のなかで, Blalock-Taussig手術の優秀性が指摘されており, 可能なかぎり本術式を第1選択とすべきであるが, 解剖学的理由などからすべての症例に応用できるとは限らない. そこで, もしも成人大伏在静脈を短絡グラフトとして利用することが可能ならば, 手術手技的にもより容易に吻合が可能であり, 血行力学的にはBlalock-Taussig型の短絡が得られるのではないかとの考えから以下にのべる動物実験を行つた. 雑種成犬の下行大動脈-左肺動脈間に静脈グラフトとして, 自家静脈片を用いるI群と同種静脈片を用いるII群を作成して, 長期生存を計り, 血行力学的および移植静脈の病理組織学的検討を行つて次のような結果が得られた. 静脈グラフトの直径と血流量(短絡量)との間には明らかな正の相関関係が認められ, 短絡術直後の短絡率は13.3-57.5%(平均31.5%)であつた. さらに短絡開始直後の体血圧平均値の低下率を算出した結果4.0-25.0%(平均12.5%)であり, 短絡率とは密接な相関関係が認められた. I, II群の術後1ヵ月以上生存犬における犠牲屠殺時のグラフト流量平均は短絡術直後のそれぞれ72.3%, 68.8%で両群間に有意差は認めえなかつた. また犠牲屠殺時肺高血圧を示したものは両群で1例もなかつた. 移植静脈グラフトの開存率に関しては, I群70%, II群68%と両群間に有意差はなかつた. 両群で剖検時動脈瘤様拡張を示した静脈グラフトは1例もなく, 病理組織学的にはII群のグラフト開存例でI群より強い組織反応所見が得られたが, 内腔は良好に開存しており, II群の術後最長7ヵ月生存例でも同様所見だつた. 以上より同種静脈を利用しての大動脈-肺動脈短絡作成術は十分臨床応用可能であると考える. |