アブストラクト(24巻10号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 冠状動脈造影法の造影剤注入による心機能低下に関する研究
Subtitle :
Authors : 寺本勅男, 倉橋秀寿, 岡村永義, 福慶逸郎
Authors(kana) :
Organization : 名古屋保健衛生大学外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 24
Number : 10
Page : 1308-1322
Year/Month : 1976 / 10
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 選択的冠状動脈造影法の造影剤の注入時に心機能低下が生じることは知られているが, その原因および発生機序については, 研究も比較的少なく, 十分解明されていない. 雑種成犬70頭を用いて実験的研究を行つた. 心機能には, 左室圧, 左室圧dp/dt, 表面心筋収縮力, 心拍出量の各パラメーターを用いた. 冠状動脈にカテーテルを挿入し, 各種造影剤, NaCl, KCl, CaCl2, MgCl2の水溶液, ブドウ糖液, PVP水溶液などを注入して心機能低下を比較した. さらに造影剤の注入時間や注入間隔をかえた時の心機能低下を検討し, 次の結果をえた. 1. 各種造影剤の注入では, Na含有量の多い造影剤が心機能低下が著明であつた. 2. NaCl水溶液の注入では, 濃度が高いほど心機能低下は著明であつた. 3. 1%KCl, 1%CaCl2水溶液では, 著明な心機能低下を認めたが, 1%MgCl2水溶液では心機能低下を認めなかつた. 4. ブドウ糖液も, 20%, 50%のものでは心機能低下が認められた. 5. PVP水溶液は, 高濃度のものでは心機能低下が認められたが, 程度は少なかつた. 6. 造影剤の注入では, 短時間で注入した時よりも, 長時間で注入した時の方が心機能低下は著明であつた. 7. 造影剤の注入間隔を短かくすると, 心機能低下は著明となつた. 以上から, 心機能低下の発生は, 電解質, とくに注入領域の細胞外液のNa, K, Caの不均衡による拮抗作用の混乱が主な原因で, これにcoronary stretch receptorsなどによる反射機構が関与すると考える. 選択的的冠状動脈造影法は, Na含有量の少ない粘稠度の低い造影法剤を用い, 注入は短時間に行い注入間隔を十分とるのが安全である.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords :
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