アブストラクト(24巻11号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 体外循環下開心術中の心筋保護法, とくに冷却血液による選択的低流量冠灌流法について
Subtitle :
Authors : 野々山明, 笠原憲二, 福中道男, 佐藤正, 藤尾彰, 斉藤幸人, 藤瀬久美子, 増田与, 小谷澄夫, 香川輝正
Authors(kana) :
Organization : 関西医科大学胸部外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 24
Number : 11
Page : 1381-1392
Year/Month : 1976 / 11
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 体外循環下開心術中ことに大動脈遮断下での心筋保護法については, 種々な方法が行われているが, それらは, いずれも検討されるべき多くの問題点が残されており, その優劣については, 意見の一致をみるに至ってはいない. 私達は, 従来より, 冷却血液による選択的低流量冠潅流冷却法を行っているが, 本法は, 心機能および心筋代謝の面, 組織学的ことに電顕的所見からみて, 心筋保護法として, すぐれた効果を挙げうる. 臨床的には, とくに高度の心筋障害を伴う重症連合弁膜症例を主な対象として, Ht25%前後の稀釈体外循環で, 10℃前後に冷却した血液を用いて, 60ml/min前後の持続的冠潅流を行い, 60~200分の大動脈遮断を行った結果, 冷却中心筋温は15℃前後に維持されるが, この温度でもなお2ml/min前後の酸素摂取がみられ, 心筋での嫌気性代謝を生じず, 冷却開始後100分の乳頭筋では, ミトコンドリヤ, グリコーゲン顆粒などに変化をみず, 術後心機能も良好に維持された. また, 雑種成犬を用いて, Ht20~25%前後の稀釈体外循環下に, 120分の大動脈遮断実験を行い, 他の心臓局所冷却法すなわち4℃前後に冷却した乳酸リンゲル液による冠潅流法および4℃前後に冷却した生食水で心嚢内を潅流するtopical cooling法と比較検討した結果からも, 20ml/min前後の冠潅流を行った本法では, 最もすぐれた心筋保護効果がみられ, 電顕的にも心筋各層での有意の変化を認めず, 毛細血管内支細胞のviabilityも維持されるのがみられた. 以上より, 冷却血液による持続的低流量冠潅流法は, 開心術中の心筋保護法として, きわめてすぐれた, 論理的な方法であり, かつ, 静止した術野で, 時間の制限なしに, 容易に手術操作ができるため, ことに高度の心筋障害のあるような重症例に応用さるべきであると思われる.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords :
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