アブストラクト(24巻11号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 開心術の糖代謝におよぼす影響に関する研究―単純低体温と体外循環との比較検討―
Subtitle :
Authors : 志田寛, 森本雅巳, 井之川孝一, 津金次郎
Authors(kana) :
Organization : 信州大学医学部第2外科教室
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 24
Number : 11
Page : 1402-1408
Year/Month : 1976 / 11
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 従来, 外科侵襲時には高血糖とインシュリン分泌の抑制がおこり, これはカテコールアミンの増加に由来するものと結論されている. 本研究は開心術に伴う糖代謝異常の本態を解明するため, 単純低体温下開心術と体外循環下開心術との糖代謝を比較し, とくにインシュリンの変動と交感神経機能およびカテコールアミンの消長を反映するdopamine-beta-hydroxylase(DBH)活性との関係を検討した. 検索項目は血液ガス, 血液乳酸, ピルビン酸, 血糖, 血漿NFFA, 血漿IRIおよび血清DBHである. 低体温下開心術においては, 血液pH, およびB.E.の低下, 血液乳酸, ピルビン酸, 血糖および血漿NEFAの増加が認められ, 体外循環下開心術においても, 循環中程度の差はあるが低体温の場合と同様な変動が認められた. すなわち, 低体温および体外循環においては, 糖代謝異常として, 糖の末梢利用低下, 嫌気性代謝亢進に起因する乳酸血症, 代謝性アシドーシスおよびglucose fatty acid cycleの異常などが認められた. また, 低体温においては, 冷却中IRIおよびDBHは不変であり, 体外循環中もIRIは不変で, DBHは低下を示した. 以上, 糖代謝面よりみて, 低体温下開心術と体外循環下開心術においては, 本質的差異はなく, 一般外科侵襲時と同様高血糖とインシュリン分泌抑制を示す糖尿病状態が認められた. 一方, インシュリン分泌抑制の機序に関しては, DBHの増加は認められず, したがって, 交感神経緊張およびカテコールアミンの増加は否定的であり, 膵血流量の減少ならびに低温に由来する, 一時的膵機能低下が重要な役割を演じているものと推測される.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords :
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