アブストラクト(24巻11号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 先天性冠状動脈瘻―本邦における症例報告の集計と検討―
Subtitle :
Authors : 古島芳男, 春谷重孝, 室田欣宏, 松沢秀郎*
Authors(kana) :
Organization : 中央鉄道病院心臓血管外科, *新潟大学胸部外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 24
Number : 11
Page : 1409-1419
Year/Month : 1976 / 11
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 先天性冠状動脈瘻の症例報告は, 次第に増加しているが, これまで, 本邦症例のくわしい検討は行われていない. 本論文では, まず, 自験例を報告し, ついで, 本邦における症例報告を集計, 分析した. 自験例:5歳, 女. 右冠状動脈右室瘻を右室流入部位で, 結紮, 閉鎖した. 5ヵ月後, 心陰影は縮小し, 冠状動脈造影では拡大, 蛇行していた右冠状動脈の正常化が認められた. 本邦の症例報告の集計:文献上106例, 学会場発言27例, 合計133例(手術105, 経過観察22, 剖検3, その他3例). この内, ある程度内容の明かな100例(手術78, 経過観察22例:男41, 女54, 不明5例)を検討した. 一般的検討:流出冠状動脈は, 右57, 左36, 両側2, 単1, 不明5例. 流入腔は, 右室38, 右房28(冠静脈系2), 肺動脈15, 左室12, 左房1, 不明6例. 右→右室30, 左→右房16, 右→右房12, 右→左室10例. 冠状動脈枝末端瘻が最も多い. 臨床的検討:連続性心雑音が特有で, 75%にきかれた. 左室流入例では拡張期性雑音がやや多い. 最強点も流入腔別に大体きまっており, 右房は右III肋間, 右室は左IV肋間, 肺動脈は左II肋間, 左室はIV肋骨位がほぼ中心になる. 術前の誤診では, PDA4, VSD3例などであった. 合併心疾患は, 先天性17例, 後天性8例であってASD7, PDA6, TF2例などである. この内, 術前に合併瘻を発見したのは, ASDは6, PDAはわずか1例である. 大動脈または冠状動脈造影は約65例に行われ, 確診に欠かせぬ. 外科治療的検討:78例について瘻閉鎖術(6種に分類), 直視下手術(26例に実施), 瘻の流入形式(3型に分類)および流入腔の関係を検討した. 術後転帰は死亡4, 再発再手術1, 心筋硬塞例数例などがある. 術後の造影では, 14例中, 正常化5, 不変6, 本幹閉塞1例などであった. 手術適応は, 現在の問題であって, 流入腔別の症状発現の差, 経過観察例の手術をしない理由などを含めて考案した. この疾患の本態を長期にわたり検討した上でなければ決定しがたい点であるが, 著者らは, 大体, 積極的手術適応の立場をとる.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords :
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