アブストラクト(24巻11号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 異種心臓弁移植の実験的ならびに臨床的研究
Subtitle :
Authors : 土屋和弘, 岩喬
Authors(kana) :
Organization : 金沢大学医学部第1外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 24
Number : 11
Page : 1420-1435
Year/Month : 1976 / 11
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 異種生物弁移植の処理に際し, グルタールアルデヒド処理(以下G-A)による優秀性に着目し, 下記の実験を行った. 豚大動脈弁を用いて各種濃度のG-A処理を行い, その荷重試験, 逆流耐圧試験, 蛋白溶解試験を行った. 次いで0.2%G-A処理弁2gを用いモルモットに免疫を作製し, 寒天内二重拡散法, 重層沈降法, タンニン酸処理血球凝集反応を行った. また仔牛の下行大動脈に上記0.2%G-A処理弁付大動脈および0.2%I-G-A処理弁付大動脈を計4頭移植し, 77日から154日にかけ経時的に犠死せしめ, 組織学的および免疫学的検索をした. また0.2%G-A処理弁である市販のHancock xenograftを用い, 先天性または後天性弁膜疾患8例に移植し, それらの血行動態的検索を経時的に行つた. 同症例に対し寒天内二重拡散法, 重層沈降法, 皮内反応を行い, 弁尖抗原およびPHA-Mによる淋巴芽球化現象を3H-thymidineを用いて計測した. 以上の研究により下記の知見を得た. (1)0.05~0.30%G-A処理豚大動脈弁は臨床的に十分耐え得る強さとしなやかさを獲得する. (2)0.20%G-A24時間処理により溶出蛋白量は無処理弁の約10%に低下する. (3)G-A処理により豚大動脈弁の著明な抗原性の低下が得られる. (4)0.20%G-A処理弁および0.20%I-G-A処理弁の仔牛下行大動脈への移植片はその構造を良く保ち得てはいたが, 組織学的検査で移植片の外膜側, 吻合部, 心筋付着部に主に淋巴球, 好酸球, 形質細胞, 組織球性細胞からなる細胞浸潤を認めた. その浸潤細胞に, 蛍光法でIg-Gの存在が認められた. また移植片の硬化, 石灰化を認めた. (5)0.20%G-A処理弁であるHancock xenograftを用いた移植8症例では抗凝固剤非投与で血栓発作は1回も認めない. 弁の逆流および感染, 石灰化, 溶血も認めず満足すべき術後経過である. 免疫学的検索では, 2ヵ月以上の症例で弱い抗体の存在が示唆されたが術後1年以上経過例ではその反応は一層弱くなっていた. G-Aの架橋形成とダクロンの被覆により抗体による弁の変化, 破壊を防止していると考えられる.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords :
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