アブストラクト(24巻11号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : ファロー四徴症における右室心筋の病理組織学的研究
Subtitle :
Authors : 加藤正明, 曲直部寿夫
Authors(kana) :
Organization : 大阪大学医学部外科学第1講座
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 24
Number : 11
Page : 1436-1445
Year/Month : 1976 / 11
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 104例のFallot四徴症例の右室心筋について, 心筋線維の直径をChalkley-Araiの方法で測定した. また, 心筋間質の結合組織性隔壁形成と心筋細胞の変性の有無から心筋病理組織像を, 両所見ともにないI群, 前者のみあるII群, 両所見ともにあるIII群に分類した. その成績と年齢, Hb量, SaO2, PA/Ao比(肺動脈幹/大動脈起始部・直径比)との関係につき検討した. その結果(1)右室心筋線維の直径と年齢間に相間(r=0.74, P>0.01)が認められた. 右室心筋線維の肥大は生誕と同時に開始され, 中には40μ以上の直径に達する例も見られた. 3歳以下の症例ではほぼ全例I群の組織像を示したが, 4歳以上になるとII群の像を示す例が増え, 5歳にして早くもIII群の症例が認められ18歳以上では全例III群の像を示した. すなわち加齢とともにより高度の心筋の組織学的変化が認められた. (2)Hb量と右室心筋線維の直径間にわずかながら相関(r=0.37, P>0.01)が認められたが, 年齢因子の介在によるものと考えられた. (3)右室心筋線維の肥大と病理組織像にはSaO2は関与していないと考えられた. (4)PA/Ao比と心筋線維の直径間に相関はなくこれと病理組織像間にも関連性はなかった. (5)I群の像を示した例の心筋線維の平均直径は15.2±3.22μであり, 直径が15.0μ以下の例は総べてI群の組織像を示した. II群の像を示した例の心筋線維の直径は平均20.1土2.92μ, III群のそれは27.2±5.32μであり, 直径が23.0μ以上の症例では1例を除き総べてIII群の病理組織像を示した. (6)以上の成績を総合するとFallot四徴症における右室心筋の肥大およびその病理組織学的変化は主として右室にかかる圧負荷による経年変化であって血液性状の関与するところは少ないと考えられる. また同様に肺動脈狭窄の重症度も右室心筋の肥大および組織学的変化に関与しない. 心筋の病理組織学的変化という見地からすれば, 本症の根治予術は生後3歳迄に行うのが望ましいと考えられる.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords :
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