アブストラクト(24巻12号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 常温体外循環時の腎血行動態に関する研究―全腎血流, 腎内血流分布の変動および腎組織ガス分圧の変動からの検討―
Subtitle :
Authors : 笠井敏雄*,**, 砂田輝武*
Authors(kana) :
Organization : *岡山大学第2外科, **岡山大学温泉研究所
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 24
Number : 12
Page : 1533-1543
Year/Month : 1976 / 12
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 開心術後の急性腎不全はその発生頻度は低いが, 臨床上重要な合併症の1つである. その発生には多くの因子が関与していると考えられるが, その根底にあるものは腎血行動態の異常であり, 体外循環中にも腎不全発生に関与する腎血行動態の異常が生じていると考え, 常温稀釈体外循環中の全腎血行動態, 腎内血流分布の変化をradioactive microsphere法を用いて検討し, また腎血行動態の変動時には腎組織酸素分圧, 炭酸ガス分圧にも変化を来していると考え, 腎皮質において潅流量と組織ガス分圧の関係および120分間の体外循環中の組織ガス分圧の変動を検討して以下の結果を得た. 1. 潅流量2.2l/min/M2(100~110ml/min/kg)の体外循環では, 腎血流分布率の有意の低下はない. 全腎血流量は有意の低下を認める. 2. 体外循環中, 全腎血流量が減少するが腎皮質各層で均等に減少するのではなく, 皮質外層で強く減少し, 皮質内層では血流はよく保たれており, 腎血流の皮質外層から内層へのshiftを認める. 3. 体外循環中, 腎組織炭酸ガス分圧の上昇, 酸素分圧の低下をきたすが, その程度は低流量潅流になるにつれて増強する. 4. 120分間の体外循環中の組織酸素分圧, 炭酸ガス分圧は100ml/min/kgと40ml/min/kgの潅流量群では, その値に差は認めるが, 経時的変動は同じである. 5. 体外循環中に腎内血流の皮質外層から内層へのshiftが生じるために, 糸球体濾過量が腎血流量の減少以上に低下(filtration fractionの低下)することにより尿細管尿の減少, 流速の低下をきたし, 尿細管細胞の機能的, 器質的変化の発生に関与すると推測する.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords :
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