Abstract : |
1968~1975年4月までに当施設で切除された原発生肺癌例のうち合併療法として術前気管支動脈内抗癌剤注入(BAI)の行われた68例を対象とし, 腫瘍影の縮少度, 組織型と血管影の型, および本法施行群の術後生存率についてBAIを行わなかった同時期の切除例142例を対照として検討した. 陰影縮少率については扁平上皮癌, 単純癌で著しく, 前者では主気管支より区域までの中枢発生例に著明であった. 腺癌では末梢発生例で縮少効果はなく, 腫瘍の増殖進展に伴って気管支破壊, 基質の改築に及んだものでは, 血管の増生とともに縮少が見られたものがある. 術後の遠隔成績は一般に対照群に比して良く, 5年生存率は扁平上皮癌で53.8%腺癌で55.0%となるのに反して対照例ではそれぞれ35.5%, 30.3%であった. 単純癌では5年生存例がなく, 対照に比しても不良であった. 臨床病期のI期例を除いたII期~IV期例で見ると, 扁平上皮癌で48.5%, 腺癌で34.3%となり, BAIの効果が著明と考えられた. 術式別に見ても, 扁平上皮癌では準治癒手術群においても著しい効果が見られた. BAIに伴う副作用はなく, one shot注入であることから, 予後の優秀性はとくに扁平上皮癌でみられ, BAIは有用な合併療法であると考えられた. |