Abstract : |
細菌性心内膜炎(BE)による重症大動脈弁閉鎖不全(AI)に対し, Hancock弁を用いて緊急大動脈弁置換術を行い良好な結果を得た. BEに対する弁置換術は, 内科的治療だけを行うのに比べて, 好成績をおさめており, 本症のごとく左室拡張終期圧が60mmHgと著しく上昇した症例でも, 積極的に外科治療を行うべきである. 本症はAIにより, 左室拡張期圧(LVDP)が早期に著しい上昇を示したため, 最低血圧の低下がみられなかった. LVDPの上昇とAI jetが僧帽弁の著しい早期閉鎖をおこし, 僧帽弁口にはAustin-Flint雑音を生じた. さらに, 左室収縮様式の変化によるものと思われる収縮末期の僧帽弁閉鎖不全も生じた. これらは大動脈弁置換術のみですべて消失した. このような症例では対象が重症例であるだけに, 僧帽弁の異常所見が機能的異常にすぎないという例の存在を認識して手術を行うことが必要である. Hancock弁Model242の27mmを用いたが, 術後左室‐大動脈圧差が収縮初期で60~70mmHg, 中期で20mmHg前後生じた. 他の3例においても同様の経験をしており, Bioprosthesisにおける圧差の問題は今後検討を要する. |