アブストラクト(24巻12号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 胸腺腫―その良性, 悪性診断の基準に関する考察
Subtitle :
Authors : 石川創二, 小松健治, 富木経三
Authors(kana) :
Organization : 順天堂大学胸部外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 24
Number : 12
Page : 1602-1613
Year/Month : 1976 / 12
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 昭和32年より昭和50年10月までに, 33例の胸腺腫を治療し, 18例(56.3%)が, 何らかの原因によって死亡した. 死亡の原因を追求すると, 腫瘍の侵襲による死亡が12例で, 合併症や他疾患による死亡が6例であった. 腫瘍死12例のうち, 何らかの組織学的悪性像を認めた例は9例(88.4%)で, 3例には, 組織学上悪性所見は認めなかったが, 悪性腫瘍と全く同じ病態を経て死亡した. これらのことから, 胸腺腫の良性, 悪性の判断には, 腫瘍死した例を絶対的悪性胸腺腫と断定し, それらの病態をもとにして, 自験32例の症例と比較検討した. この結果, 自覚症状では, 胸腺腫による胸痛を訴える場合は予後極めて不良である. レ線上胸部腫瘍陰影を縦隔の両側に認める例は, 組織学的にも悪性像を認めた. 腫瘍による気管や気管支を閉塞する他覚的所見も, 予後極めて不良である. 気縦隔造影や, 血管造影で, 腫瘍と心膜との遊離性のないもの, 上大静脈の圧迫や閉塞像を認めるものも, 組織学的悪性所見を認め, 予後不良であった. 頚部リンパ節, 腋窩リンパ節に転移を認める例は, 病理学的にもすべて悪性例であった. 組織学的に悪性所見のある例は, 当然悪性胸腺腫の範囲に入るが, 腫瘍内に出血や壊死を認める例に組織学的悪性像を有している場合が多く極めて重要な所見と見做した. このように, 各症例を検索して胸腺腫の悪性診断基準を, 定めるうえに病理組織学的所見だけでなく, 明確な臨床所見をも加えて基準とすることが, 現在の胸腺腫の臨床に適合するように思われる. 一方良性胸腺腫は, 悪性診断基準の裏返えしであるが, つぎの条件を満すことが必要である. すなわち, 全く無症状か, 症状に乏しい. レ線上胸部平面写真で腫瘍陰影を認め難いか, 乃至は右側または左側縦隔に限局する. 周囲組織と遊離性である. 病理組織学的には, 分葉構造を呈し出血や壊死はほとんどなく, 組織学上悪性所見を認めない. これらの事項を満足する胸腺腫が, 真性の良性胸腺腫として診断して可なるものと考える.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords :
このページの一番上へ