アブストラクト(25巻6号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : エプスタイン奇型に対する三尖弁挙上転位術の経験とその適応選定に関する知見
Subtitle : 原著
Authors : 藤田毅*1, 川島康生*1, 森透*1, 北村惣一郎*1, 大山朝賢*1, 井原勝彦*1, 曲直部寿夫*1, 松本正幸*2, 松尾裕英*2, 小塚隆弘*3, 藤野正興*3, 近森淳二*4, 南城悟*4
Authors(kana) :
Organization : *1大阪大学第1外科, *2大阪大学第1内科, *3大阪大学中放, *4国立療養所近畿中央病院外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 25
Number : 6
Page : 733-748
Year/Month : 1977 / 6
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : エプスタイン奇型は三尖弁の右室内下方転位を伴った弁の形態異常と機能不全を示す先天性心疾患である. 本症の根治術としては弁置換術が主として行われており, 三尖弁挙上転位術についてはその適応が極めて限定されるというのが大方の意見である. しかしわれわれは7例の本症手術例のうち, 5例に三尖弁挙上転位術を施行し, 良好な成績を得たので, その経験に基づいて本術式の適応の選定についての問題点とその知見をのべる. 本症に対し三尖弁挙上転位術を施行するにあたっては, まず修復可能な弁機構をもった弁尖が存在するかどうか, また, 三尖弁挙上転位術により心房化右室は心腔として当然消失する事になるが, この際機能的右室が心拍出量を得るに充分な容積とその機能をもつかどうかが重要な問題となる. これらの問題を術前に検索するには, ACG所見の他に心エコー法が極めて有用であった. 超音波静止断層法, 超音波断層キモグラム法, UCG法によりACGのみでは知り得なかった三尖弁弁尖の大きさ, 弁膜の形態およびその動きを明瞭に知りえると同時に, 機能的右室の容積も推測できた. 手術に際しはHardyの報告にみられる手技での三尖弁挙上転位のみでは弁機能の修復は不可能であり, 弁輪形成術が追加されねばならなかった. これらのわれわれの手術成績より次の事が結論された. すなわち(1)三尖弁は弁の位置異常を示すも修復可能な弁機構を有していた. (2)機能的右室は適当な容積を有し右室機能を充分に維持しうるものであった. (3)心房化右室は縫縮すべきものと考える. (4)三尖弁挙上転位術により頑固な不整脈の消失した症例を経験した. (5)エプスタイン奇型は, グレン吻合術の適応となる右心の発育不全疾患とは区別されるべきものである. さらにエプスタイン奇型の病態は弁機能異常を有するもその大部分の症例において三尖弁置換よりもむしろ三尖弁挙上転位術が第一に選定されるべきものと考える.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : エプスタイン奇型, 三尖弁挙上転位術(Hardy手術), 機能的右室, 心房化右室, エプスタイン奇型に対する超音波断層図記録面
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