アブストラクト(25巻9号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 開心術時の心筋保護の研究(特に心筋エネルギー代謝からみた評価)
Subtitle :
Authors : 渡部高久, 林重汎保, 高橋俊三, 佐々成紀, 内藤龍彦, 鳥山紀彦, 浅妻茂生, 金偉雄, 前田知行, 和田行雄, 橋本勇
Authors(kana) :
Organization : 京都府立医科大学第2外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 25
Number : 9
Page : 1107-1118
Year/Month : 1977 / 9
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 最近, 重症心疾患の長時間開心術が増加してきた. 開心術後の心機能障害のうち, 心筋起因性のものは術前からの心筋肥大および心筋障害に, 術中の心筋乏血および代謝不全が加味されて発症するので積極的な術中の心筋保護が必要となる. 私どもは開心術時の心筋保護法の1つとして選択的冷却酸素化液冠潅流法を考案し, 心筋のエネルギー代謝について, 細胞レベル, 分子レベルから検討した. 潅流方法は大動脈遮断後心停止液にて急速に心停止させ, 大動脈基部または直接冠動脈に送液用カニューレを挿入, 脱液用カニューレは右心房に挿入する. 潅流液はmodified Saviosol溶液を空気で撹拌混和させて酸素化したもので点滴持続潅流した. 潅流中経時的に左室心筋を採取し, 高エネルギー燐酸化合物, ミトコンドリア機能および超微細構造の変化を検索した. また動脈側および静脈側から採液し潅流中のガス分析, 乳酸, ピルビン酸, 電解質および諸酵素の測定をした. 私どもの潅流法で心筋温を10~20℃に維持するならば, 6時間まで充分にミトコンドリア機能は保たれ, TCA cycleも回転しており, 私どもが作成した心蘇生可能な判定基準を上回っていた. 本法による心筋保護法は肥大心においても2~3時間は充分心筋を保護しうるし, 心内操作も容易で(無血および心筋の弛緩)あり, また手技も簡単である利点がある. 私どもは3年来の基礎的研究に基づいて, 現在までに2例の臨床応用を試みた. 心室中隔欠損兼大動脈閉鎖不全症で著明な左心室肥大を伴った症例(20歳, ♂)に連続大動脈遮断, 134分, その間AVRおよびVSD閉鎖を施行, 心蘇生は良好で, 術中術後何らinotropic drugを要しなかった. 少数例ではあるが臨床的にも非常に良い結果がえられたので, 今後長時間開心術症例に応用し検討して行きたい.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 1. 開心術中心筋保護, 2. 酸素化冷却非血液性潅流液, 3. 心筋エネルギー代謝, 4. 心筋収縮機構, 5. 細胞レベルの蘇生可能判定基準
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