アブストラクト(25巻10号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 高齢者心房二次中隔欠損症の外科治療とくに加齢による変化から見たその特徴
Subtitle :
Authors : 柿原理一郎, 弥政洋太郎
Authors(kana) :
Organization : 名古屋大学医学部第1外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 25
Number : 10
Page : 1316-1333
Year/Month : 1977 / 10
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 37例の30歳以上の心房二次中隔欠損症に対し開心術を行い, 手術成績は満足すべきものであったが, その術前, 術後の状態には若年者と異なる点が多かった. 本論文ではまずその37例の経験について述べ, 次いで2歳から52歳迄の症例107例を分析し, 加齢による変化から見た高齢者ASDでの特徴について述べた. 1)30歳以上の37例において, 術前のNYHA分類での重症度とよく相関するのはCTRの増大, frontal QRS axisの左方への偏位, RVEDPとRAmの上昇であり, また高齢者でもQp/QS3≧3.0の大短絡症例が54.1%と過半数であった. 術後合併症では胸水貯留と不整脈の発生が特徴的であったが, そのための死亡例はなく, また術後の新たな持続性不整脈の発生は稀であった. 術後1年間の経過から見るとCTRおよびR or R' in V1の改善は悪く, またSV1+RV5(6)の増大, P-terminal force in V1の低下が新たに認めれらた. 心電図上myocardial damageはいずれも改善ないしは消失した. 2)2歳から52歳迄の107例を年代別に比較し, 加齢による変化を検討した. 術前では加齢による変化はCTRの増大, 不整脈, myocardial damageの発生, RVEDP, RAmの上昇が特徴であり, SV1+RV5(6)は高齢者ではむしろ減少していた. Qp/Qsは30歳代で最も大きかった. RVsp, Rp/Rsには有意の変化は認められなかった. 術後1年間の経過ではCTR, R or R' in V1の改善は加齢とともに悪化し, また高齢者ではSV1+RV5(6), P-terminal force in V1の変化から術後の左室, 左房負荷が推測された. 高齢者においても術後の運動機能の改善は良好ではあるが, 術後心機能の低下が潜在し, とくに左室, 左房負荷が存在する症例が多いと考えられ, 慎重な術後経過の観察が必要であると考えられる.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : ASDと加齢, 不整脈, 心筋障害, 左室肥大, 左房負荷
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