アブストラクト(25巻12号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 肺前循環における実験的研究-とくに肺組織学的変化よりの考察-
Subtitle :
Authors : 西村治, 桜井武雄, 長束皓司, 太田久雄, 得津修一, 山岡慶之, 岡田一男, 松岡純生, 鈴木淑男, 野上博司, 横井秀樹, 阪中孝三, 岡田浪速, 石井亨*
Authors(kana) :
Organization : 和歌山県立医科大学胸部外科, *和歌山県立医科大学第一病理
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 25
Number : 12
Page : 1559-1570
Year/Month : 1977 / 12
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 肺前循環の正常肺組織に与える影響を検討するために雑種成犬を用いて2つの基礎実験を行った. 1)4時間の肺前循環を行い潅流中の呼吸方法により実験犬を次の5群にわけた. 第1群空気自然呼吸, 第2群空気呼吸器使用, 第3群純酸素呼吸器使用, 第4群空気定常吹送, 第5群窒素定常吹送. 4時間の潅流を行い得たのは第1~第3群であり, 第4群は低酸素血症のため潅流3時間で, 第5群は肺胞での酸素の逆拡散による低酸素血症のため潅流1.5時間でそれぞれ全例死亡した. 肺胸廓コンプライアンスは第1~第4群において潅流前後に差は認められなかった. 肺組織変化では第2群空気呼吸器使用群に最も変化が少なく, ほとんど正常像を呈したが, 第3群純酸素呼吸群では肺のうっ血, 出血像が著明に見られた. その原因は肺における酸素較差A-a DO2の減少による急性酸素毒性によるものと考えられる. 第1群空気自然呼吸群では潅流中の自発呼吸の減少による無気肺およびそれに伴う出血, うっ血像を見たが, 同郡の潅流終了後20時間目屠殺例ではほとんど異常を認めなかった. 2)回転円板型人工肺内に同種ヘパリン加血液を貯溜させ, 空気あるいは純酸素吹送下に6時間あるいは14時間円板を回転させ血液変性を計った. この血液を健康犬の左肺動脈下葉枝あるいは胸部大動脈より注入し, 両側肺および両側腎の組織検索を行った. 変性血液および血液被注入犬血液ではアルブミンの減少, α2, βグロブリンの増加を示した. 組織所見では肺のうっ血, フィブリン血栓と腎の尿細管上皮細胞変性, 蛋白円柱, 血栓などが見られたが, 血液注入部位による差異はなく, 血液変性の程度に比例した所見が得られた. 肺前循環時に問題となる肺のうっ血性病変は体外循環に起因する血液変性によるものであり, 血栓対策, 稀釈液の改善などにより防ぎ得るものと思われる.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 補助循環, 肺前循環, 呼吸不全症候群
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