アブストラクト(25巻12号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 肺の粘液癌(Colloid Carcinoma)の一切除例
Subtitle : 症例
Authors : 白日高歩, 大田満夫*, 堀江昭夫**, 井口潔
Authors(kana) :
Organization : 九州大学医学部第2外科, *国立九州がんセンター呼吸器部, **国立九州がんセンター病理部
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 25
Number : 12
Page : 1650-1654
Year/Month : 1977 / 12
Article : 報告
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 肺(気管支系)の粘液産生腫瘍の代表的なものとしては, 気管支粘液腺発生のcylindromatous adenomaや, adenoid cystic carcinomaがよく知られている. その他, 気管支上皮由来の腺癌, 未分化癌にも粘液産生像がみられるが, これら気管支上皮由来の肺癌が異常に著明な粘液産生を示す事は通常稀である. われわれは肉眼的ならびに組織学的に著明な粘液産生を示す腫瘍の1切除例を経験し, その後の経過を観察したので報告する. 当腫瘍の切除時肉眼所見としては, 発生部位である左下葉気管支は粘液を含む腫瘤性発育で閉塞され, 腫瘍そのものも粘液塊の状態で実質組織は少なかった. 組織学的には, 腫瘍内部は粘液を含むcysticおよびglandularな構築がみられ, 一部に粘液産生を示す腫瘍の増生所見が認められたが, 異型性は比較的少なかった. 一方, 粘液中への腫瘍細胞の脱落像が著明であり, 気管支軟骨片の破壊もみられた. 当腫瘍の発生部位として, 気管支粘液腺および気管支上皮が考えられたが, 諸種の組織学的検索の結果, 気管支上皮発生の粘液産生腺癌と診断された. しかし腫瘤の大きさの程度に比して, リンパ節転移は認められず, さらに術後4年経過した現在, 再発所見も認めていない. 当腫瘍の著明な粘液産生像は, その特徴的所見より虫垂や, 卵巣のmucocele, cystadenoma, cystadenocarcinomaなどのcolloid carcinomaに類するものと考えられるが, このような型の気管支腺癌は希であり, 予後のよい点からも注目されるものと思われる.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 粘液癌, 気管支上皮由来腺癌, 気管支腺由来腺癌
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