アブストラクト(26巻1号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 僧帽弁弁膜症の肺循環動態肺血流シンチスキャンニング法による手術前後の肺循環動態の変動並びに狭窄症と閉鎖不全症の比較検討に関する研究
Subtitle : 原著
Authors : 筆本由幸, 曲直部寿夫
Authors(kana) :
Organization : 大阪大学医学部第1外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 26
Number : 1
Page : 13-26
Year/Month : 1978 / 1
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 大阪大学第1外科において手術を施行した僧帽弁狭窄症(MS)49例, 僧帽弁閉鎖不全症(MI)22例について, 肺血流シンチスキャンを行い, 肺血流分布を上下比として把え, その変動を経時的に追求し, 術前および術後遠隔期の血行動態との関係について検討を行った. 術前の上下比と血行動態との間では, MS群は左心房平均圧(r=0.69, p<0.001), 肺動脈収縮期圧(r=0.54, p<0.001), 肺動脈平均圧(r=0.54, p<0.001)に, MI群は左心房平均圧(r=0.50, p<0.05), 肺動脈収縮期圧(r=0.62, p<0.01), 肺動脈平均圧(r=0.51, p<0.05)の相関関係を認めた. 上下比と左心房に常在する最低圧との関係は, MS群でr=0.74, p<0.001, MI群でr=0.63, p<0.01となり, 左心房平均圧と上下比の関係より密になった. このことよりpost capillaryの障害による肺血管の変化は, 左心房や肺静脈にかかる最低圧に最も影響されることが判明した. 術前, 術後4週以内, 術後6ヵ月以後の経時的な変化は, MS群では各時期の間にp<0.001の有意の差をもって減少したが, MI群では減少度が少なく, 術前と術後6ヵ月以後の間にp<0.05の有意の差を認めるのみであった. MS群の肺循環障害は手術による血行動態の改善で変化し得ることが判明した. 遠隔期の上下比と血行動態との間では, MS群は肺動脈収縮期圧(r=0.47, p<0.05), 肺動脈平均圧(r=0.53, p<0.02), 肺血管抵抗(r=0.55, p<0.01), MI群は心係数(r=-0.53, p<0.05), 肺血管抵抗(r=0.66, p<0.02)との相関関係を認めた. このことはMS群の術後の肺血管の変化が肺動脈圧に関係していることを示唆した. しかし運動負荷を行ったところ, これらの相関関係は消失した. 運動負荷による上下比の変動は, MS群が有意の差(p<0.01)で増加したが, MI群は不変であった. この事実によりMS群の術後に残存する肺血管の変化は下肺野に強いことが明らかとなった.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 僧帽弁狭窄症, 僧帽弁閉鎖不全症, 肺循環障害, 肺血流シンチスキャンニング, 131I-MAA
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