アブストラクト(26巻1号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : V-Aバイパス法の工学的解析と臨床応用 -第1編 定常流V-Aバイパス法の効果と限界-
Subtitle : 原著
Authors : 梅津光生, 土屋喜一
Authors(kana) :
Organization : 早稲田大学理工学部機械工学科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 26
Number : 1
Page : 27-36
Year/Month : 1978 / 1
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 本論文では, 心内修復直後の心肺離脱期に用いられる部分体外循環(定常流V-Aバイパス)の効果に関して, シミュレーション技法による工学的解析を行い, 本法の最適施行法と重症心不全に対する適応限界を明確化した. まず, 血液循環系の特性を工学的に解析し, それを基礎として血液循環系の数学モデルと機械モデルとを開発した. 数学モデルは, 集中定数化した12個の容量要素を直列に結合させた一巡モデルであり, 心臓から拍動波を送った場合の各部の血圧, 血流量をディジタルコンピュータにて計算させるものである. 機械モデルは, 人工心臓・弾性管・末梢抵抗にて構成され, 回路内は血液のかわりに水を流す完全閉鎖の流体機械モデルである. 以上2つのモデルを用いて諸種の心不全の循環動態を再現し, 各条件下での定常流V-Aバイパスの効果を調べた. シミュレーション結果から次の事項が明らかとなった. 1)定常流V-Aバイパス法は右心不全に対しては有効であるが, 左心不全に対してはいつも補助効果が期待できるわけではなく, 補助効果が期待できるのは心筋予備力が十分にある場合に限られた. 2)定常流V-Aバイパスの効果が期待できる心臓に対しては, 本法に最適バイパス量が存在し, その値は不全心拍出量の1/3~1/2であった. その最適条件下では生体心拍出量および末梢潅流量の増加傾向がみられた. 3)定常流V-Aバイパス法に対して補助効果が期待できない重症例では, バイパス施行によりかえって心臓前後の負荷増大を招いたため, このような場合には他の有効な補助手段をとる必要性のあることが示唆された. 4)諸種の条件下での定常流V-Aバイパスのシミュレーション結果と, 動物実験データとを比較検討したところ, 両者はきわめて類似していることが確認され, 解析結果を現在臨床に応用し, 良好な結果を得ている.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : V-Aバイパス, シミュレーション技法, 血液循環系の数学モデル, 血液循環系の機械モデル
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