アブストラクト(26巻1号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 僧帽弁交連切開術の術後検査値の変動とその意義
Subtitle : 原著
Authors : 土岡弘通*, 弥政洋太郎*, 阿部稔雄*, 清水健*, 石原智嘉*, 村瀬允也*, 田中稔*, 平松隼夫*, 彦坂博*, 小沢勝男*, 吉岡研二*, 西村欣也**, 日比範夫**
Authors(kana) :
Organization : *名古屋大学第1外科, **名古屋大学第3内科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 26
Number : 1
Page : 47-54
Year/Month : 1978 / 1
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 僧帽弁狭窄症は進行性の疾患で, 交連切開術後にも注意深い観察が必要といわれる. この疾患の自覚症が検査所見と必ずしも一致しない場合があり, 術後検査値の推移の明確化はとくに再手術の適応決定に欠くべからざる課題と思われる. 交連切開術(用指裂開, 開大器使用または直視下の各方法による)の術後患者255例を延べ1879年追跡した. 胸部レ線の心胸郭比(CTR), 心電図のRv1+Sv5のRv5+Sv1に対する比(R/L), 肺シンチグラムから換算した左房平均圧(LAMP), 超音波法の前尖後退速度(DDR)を主な指標とした. 遠隔死, 再手術を除いた症例の術後年毎の検査値を術前値と比較し, その経年推移を求めて統計的に処理した(術後標準値). 初回手術術式毎の術後生存曲線および再手術曲線を求めて検討したところ, 用指群で再手術なしに14年生存する例は53%に過ぎなかった. 開大器群では再手術なしに13年生存する例は88%であり, この群と直視下群の間には術後7年間に有意差はなかった. 交連切開術によってCTRは51.9%(術前値56.5%)へ, LAMPは13.4mmHg(20.9mmHg)へ, DDRは44.4mm/sec(15.0mm/sec)へと有意に改善された. しかしそれ以後CTRおよびLAMPは経年的に増加し, 術後8年および12年で術前値との間の有意差が消失した. R/Lは低値を続けた. DDRは経年的に減少したが17年値はなお術前値よりも大であった. 再手術例の再手術直前値は, いずれも術後標準値から大きく外れていた(CTR:61.3と55.0, R/L:0.61と0.26, LAMP:24.9と16.2). 以上の結論として, 1)僧帽弁交連切開術の術後には, 再狭窄発生の可能性を考慮にいれた長期にわたる定期的観察が必要である. 2)このためには非観血的検査法を用いるべきで, 聴打診, 胸部レ線, 心電図および肺シンチグラムまたは超音波診断法の組み合せが妥当である. 3)各検査値の経年的標準化は術後経過を客観的に把握するのに重要であり, とくに, より厳密な再手術適応の決定に極めて有用である. 4)非直視下手術で開大器の使用は, 手術予後を用指法に比べて約8年延長した点で効果があった.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 手術手技別の生存曲線と再手術曲線, 非観血的検査値の変動, 再手術例検査値と標準値との対比
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