Abstract : |
最近急速に使用例数が増加しているbioprosthesisを60例の患者に66個使用して, 過去4年間に得られたbioprosthesisの問題点について述べた. 本弁は従来のrigid valveよりも繊細な弁であるから, 術中における弁尖の損傷や乾燥は弁機能を著しく低下させるし, 抗生物質などの化学物質の付着は血栓形成性を増す可能性があるため, 細心の注意を払う必要がある. 房室弁位での圧較差は少なく, 有効弁口面積も広く満足すべき血行動態であったが, 前半の症例では拡張期rumbleが頻発した. これに対し, 大動脈弁位では圧較差が大であった. この原因は本弁の弁口面積が狭いためというよりは, 本弁が心室あるいは大動脈との関係において, 血流の影響を受けやすいことによると思われる. 特に, 縫着された弁の方向が圧較差やrumbleの発生に大きく関与していた. したがって, 房室頭位では本弁の最も広い支柱間を流出路に置き, 心尖部に正しく向けて縫着し, 大動脈弁位では大動脈の長軸方向に正しく向けて癒着するよう努力した. 本弁は血栓形成が少ないとされているが, 術後2ヵ月間は全例抗凝固療法が必要であり, 心房粗・細動例, 巨大左心房例, 左心房内壁の破壊が著しい例および低心拍出例では1年以上の抗凝固療法が必要であろう. 本弁の弁機能不全を疑わせる症例は2例であった. 1例は細菌感染による弁機能不全であり, 抗生物質投与は症状が消失しても数ヵ月間必要であると思われた. しかし, 弁機能不全の進行はみられず, rigid valveに比してきわめて有利な弁といえる. |