Abstract : |
「緒言」先天性心疾患に合併する大静脈系の異常は, 左側上大静脈遺残3% 1), 下大静脈異常0.6% 2)といわれ, それほど稀なものではないが, 下大静脈(以下IVC)が左房に開口する奇形は極めて稀で, 本邦では, 榊原ら3)の報告のみである. 著者らは, 最近, 心房中隔欠損(以下ASD)を伴ったIVC左房開口症の1例を手術, 治癒せしめたので, 若干の文献的考察を加えて報告する. なお, 本例はIVC左房開口症の本邦における最初の治験例と思われる. 「I. 症例」症例:本○明○, 10歳, 女児 主訴:心雑音の精査 家族歴, 既往歴:特記すべきことなし 現病歴:早産(9ヵ月)だったほかは, 妊娠および分娩中に異常はなかった. 出生後は, 年に2~3回感冒に罹患する以外は無症状だった. 約1年前, 某医に心疾患を指摘され, 当院小児科を受診し, 心臓カテーテル検査でASDと診断され, 根治手術のため1976年11月当科へ転科した. 入院時所見:身長126cm, 体重23.5kgで, 体格, 栄養とも良好であった. 脈拍88/分で整, 血圧100/70mmHgで, チアノーゼ, 太鼓バチ指, 肝肥大および浮腫等はなかった. |