Authors : |
調亟治*, 釘宮敏定*, 草場英介*, 葉玉哲生*, 賀来清彦*, 黒岩正行*, 福島建一*, 高木正剛*, 内田雄三*, 牟田博夫*, 津田暢夫**, 辻泰邦*, 西森一正** |
Abstract : |
開心術後合併症のうちで, LOSはもっとも問題が多いものの1つである. LOS治療剤として, 徒来もっとも多用されてきた薬剤はisoproterenol(ISP)であるが, 重症例への手術適応拡大につれて, 最近ISP無効のLOSが増加する傾向にある. 著者らはISP投与に代るLOS治療法として, 強力なpositive inotropic agentであるnoradrenaline(N-Ad)と, α受容体遮断剤であるphenoxybenzamine(POB)を併用するノルアド・POB併用療法(NPT)を考案し, 実験的および臨床的検討を行った. 動物実験はイヌを用い, N-Ad, adrenaline(Ad), ISPの3種のcatecholamineについて, それぞれ単独投与時とPOB併用時の心機能および血行動態の変動を観察した. N-Ad群は3群中心筋収縮力と心拍出量の増加が最大で, 冠血流量の増加を伴い, しかもPOB併用によりpositive inotropic effectを減少させることなく, N-Adの最大の欠点である著しい腎血流減少と末梢血管抵抗増大を完全に防止しうることが確認され, LOS治療法としてのNPTの有用性を示唆した. AdはN-Adに類似した薬理効果を示すが, POB併用により血圧下降がみられる現象(アドレナリン逆転現象)が, LOS治療剤としての欠点と考えられた. またISPは前2者に比して昇圧効果が弱く, かつ頻拍傾向があることが問題点であった. 臨床例では, 開心術後LOS 31例にNPTを行い, ISP投与群61例と比較検討したが, NPT群はISP群に比し, 血圧上昇, 尿量増加などの臨床効果が著明であり, しかも頻拍をきたすことが少なく, LOS治療に要する日数も有意の短縮がみられた. 臨床例におけるPoB投与量は1-2mg/kg/day, N-Ad投与量は通常1μg/kg/min以下であり, 術当日2μg/kg/min以上を要した症例の予後は不良であった. 文献上N-Ad大量長期投与時に心臓, 腎臓, 肝臓などの臓器障害がみられるとの報告があるが, POBを併用したNPTではこのような臓器障害はまったく認められなかった. |