Abstract : |
最近, 肺癌の増加は著明であり, 高齢者の症例が多いことから, 低肺機能者に対して外科療法を施行する機会が増えている. 低肺機能の患者に外科療法を強行した場合, 術後いわゆる呼吸不具者となることが多く, このような症例には, 放射線療法, あるいは化学療法, 免疫療法などによる姑息的な療法を施している現状である. そこでわれわれは, 術後に肺機能を最大限に温存させることを目指し, 肺摘除後主病巣の存在する肺葉を切除し, 残存肺葉には60Coを一回大量照射して同所性に再移植するという方法の可能性について検討した. 実験は犬を用いて行い, 左肺を体外に摘出し, 潅流後, 60Coを2,000~4,000rad照射し, 同所性に再移植して術後の肺機能を検討し, 以下の結果を得た. 1. 胸部X線写真などから, 術後, 肺水腫を発生したと思われるものは無かった. 2. 2,000rad照射した1例のみに急性放射線肺炎の発生をみたのみで, 他に急性放射線肺炎を併発したものは無かった. 3. 肉眼的には, 照射移植肺は大部分の症例で, 含気性に乏しく, 疎血性で容積の減少が認められ, 組織学的には, 胸膜の線維性肥厚, 肺胞中隔, 血管周囲の線維化, 軽度の細胞浸潤と部分的な無気肺が認められたが, 一方術後6ヶ月を経過してもなお正常な所見を呈しているものも認められた. 4. 術後2ヵ月で一側肺動脈閉塞試験を施行した2,000rad照射例では, 照射移植肺は良好な肺機能を有していた. 以上, 術後も良好な肺機能や組織像を有しているものが認められ, 手技上の改良, 慎重な術後管理に留意すれば, 本方法は充分に臨床応用の可能性を有するものと考えられる. |