Abstract : |
開心術後の急性腎不全はその予後の不良なことから, 心臓外科領域における重大な合併症である. その発生は主として体外循環中および術後の循環不全に起因すると考えられている. 本研究では体外循環中の腎循環を左右する因子として潅流圧をとりあげ, 放射化微粒子法により腎血流量, 腎内血流分布を測定し, 体外循環潅流圧の変化が腎循環, とくに腎内循環に及ぼす影響について検討し, 以下の結果を得た. 1. 体外循環中90mmHgの潅流圧では, 腎血管抵抗は潅流前より低下し, 腎血流量は有意に増加した. この腎血流量の増加は皮質中間層から内層にかけて認められ, 内層ほど血流増加率は高かった. 2. 潅流圧60mmHgでは, 腎血流量は, 潅流前に比し有意の変化を認めなかったが, 皮質外層の局所血流量は有意に減少し, 皮質外層より内層への血流再分布を認めた. 3. 潅流圧30mmHgでは腎血管抵抗は著明に上昇し, 腎血流量は著減した. 4. 体外循環中の腎血流量は潅流圧と関連しており, 高圧潅流を行えば体外循環中も腎血流量を維持できるが, 潅流圧が低下すれば腎血流量は皮質外層より減少する. この腎内血流分布の変化は糸球体濾過値の低下を伴い, 術後急性腎不全を誘発する可能性があると推測する. |